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2018-05-092018/05/09

トライアル雇用とはどんな制度なのか?企業と求職者のそれぞれのメリット・デメリットを解説

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トライアル雇用とは、厚生労働省管轄の制度で、お試し期間を設けた雇用契約のことを指します。トライアル雇用を実践する企業には助成金が出ますが、支給対象となる企業や雇用対象者には要件があります。トライアル雇用の概要と、企業と求職者のメリット・デメリットを解説します。

トライアル雇用の概要

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対象者

トライアル雇用の対象者となるのは、一般募集では選考から漏れてしまうような事情を抱えている人です。職業経験がない、あるいは離職から時間が経っている、生活保護受給者、住居のない人などが対象者にあたります。

具体的に定められている対象者は、以下のいずれかを満たしている人です。「未経験の仕事を希望している」「学校卒業後3年以内で、卒業後一切の就労をしていない」「過去2年以内に2回以上離職・転職を繰り返している」「離職期間が1年を超える(妊娠、育児、出産などの事由も含む)」「就職援助にあたり特別な配慮を要する」。

「特別な配慮」とは、生活保護受給者、母子家庭、父子家庭、ホームレスなどといった、働きにくい事情を汲むことです。選考のハードルを下げることで就労のチャンスを与えます。

トライアル期間

トライアル期間は3ヶ月です。3ヶ月が経った時点で労使合意のもと雇用が継続すれば、晴れて常用雇用となります。

助成金額

企業への助成金額は、対象者一人あたり月額最大4万円です。トライアル期間の3ヶ月間支給されます。継続雇用すれば、事業内容や対象者によっては「特定求職者雇用開発助成金」や「建設労働者確保育成助成金」を受給できる可能性があります。

対象企業

支給対象事業主には要件があります。ハローワークからの紹介によるトライアル雇用であること、雇用対象者が事業主の親類でないことなど、さまざまな要件があるため、詳しくはハローワークに問い合わせてみましょう。

トライアル雇用を実施する目的

企業の人材不足解消

トライアル雇用の目的の一つは、企業の人材不足の解消です。少子高齢化に伴い、多くの企業が人材不足に悲鳴を上げています。

多様性の受け入れ

企業に多様性を受け入れてもらうこともまた、トライアル雇用の目的です。出産、育児、介護などさまざまな事情を抱えた人をいかに雇用継続させるかが課題となっている昨今、トライアル雇用はさまざま人を企業に受け入れるための土台作りになります。

就労経験のない人に不安なくトライしてもらう

就労経験のない人は現場で即戦力として働くことができません。トライアルという形にすれば、不安なく社会参加が叶います。

事情のある人に働くチャンスを与える

通常の選考では漏れてしまうような事情のある人に、働くチャンスを与えることができます。働くことで貧困から逃れるとともに、社会に参加していることが実感でき、人生の充実度がアップします。

企業側のメリット・デメリット

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トライアル雇用を実践する企業側にはどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。メリットばかりでなく、デメリットを踏まえてから活用を決めなければなりません。

メリット1:ミスマッチを解消できる

採用時にミスマッチに気づかなかったとしても、一度正社員として雇えば継続雇用しなければなりません。トライアル雇用なら、試用の3ヶ月の間に労使間の相性を確認できます。

メリット2:ダイバーシティの実践ができる

子育て期の女性、外国人、障害者などを雇用することで会社を活性化させ、働きやすい職場づくりと利益アップを促す取り組みをダイバーシティといいます。トライアル雇用は、ダイバーシティの入り口として最適です。

メリット3:採用コストの節約

助成金を活用できることで、採用にかかるコストを軽減できます。ハローワークからの紹介なので、求人サイトなどへの広告料もかかりません。

デメリット1:育成に時間がかかる

とくに就労経験の乏しい人を採用することになるため、育成に時間がかかります。現場に負担を強いることになり、社員からの不満が出てくることも考えられます。

求職者側のメリット・デメリット

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求職者側は選考のハードルを下げてもらえるため、メリットしかないようにも思えますが、デメリットもしっかりあります。いい面も悪い面もきちんと知ってから応募しましょう。

メリット1:就労経験なし、ブランクありでもトライしやすい

就労経験のないまま、あるいはブランクがあっての就職活動は「これほど大変だったのか」と驚くほど苦労するものです。トライアル雇用であれば、その悩みはひとまず解消されます。

メリット2:家庭などに事情があっても働ける

トライアル雇用は、事情があって長時間は働けない人、初めから一般の労働者のようには働けない人の味方です。事情を汲んだ働き方を設定してもらえるため、のびのびと就労できます。

デメリット1:選べる企業は少ない

当然ながら、トライアル雇用を実施している企業にしか応募できません。希望の業種や職種では、トライアル雇用の募集が見つからないこともあります。

デメリット2:正規雇用されなければ次の採用に響く

3ヶ月のトライアル期間の後、正規雇用に至らないこともあります。事由が自分自身の怠慢による場合、次の採用に響くかもしれません。3ヶ月の間にしっかり働き、評価を得ましょう。

採用ミスマッチの防止は企業のためにも求職者のためにもなる

トライアル雇用により、採用ミスマッチはかなり防ぐことができます。企業は採用コストと育成のために費やした時間を無駄にすることなく、求職者にとっても、自分に合う会社と会わない会社を見極められる大切な期間を得ることになります。

事情を抱えた求職者にこそ、トライアル期間は必要です。企業側はチャンスを与える気持ちで辛抱強く見守り、ときには本人も気づかない能力を見出し、適所へ誘導することも必要となるでしょう。

おわりに

「事情を抱えた人の雇用」といえば、単なる人助けのように思いがちです。しかし、人には思いがけない能力があるものですし、社内に助け合いの雰囲気が生まれることで、チームワークが活性化することもあります。社内の空気も業績も停滞し、新しい風を入れたいと考えたら、トライアル雇用について積極的に考えてみてはいかがでしょうか。


[最終更新日]2018/05/09

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