女性が長く働ける会社づくりに成功した5社の事例|人事評価制度・賃金制度のノウハウ | 日本人事コラム

女性が長く働ける会社づくりに成功した5社の事例

結婚、子育て、親の介護などを理由に会社を辞めてしまう女性がいると「やっぱり、女性は長く続かない」「採用しても、どうせすぐに辞めてしまう」と思われがちです。しかし、本当にそうなのでしょうか。女性が長く働ける会社づくりに成功した、3社の事例をご紹介します。

女性が長く働ける会社にするには?

女性が長く働ける会社にするには、「定期的なコミュニケーションの場づくり」が必要です。女性活躍のための取り組みといえば「テレワークの活用」や「保育所の併設」、「育休中の賃金の支払い」「女性社員のための研修」などが必要だと考えている人にとっては、意外かもしれません。

しかし、女性を輝かせるための取り組みは、本当に「定期的なコミュニケーションの場づくり」を進めるだけでよいのです。人事評価制度を使って、コミュニケーションの仕組みを作ってみませんか。

私が提唱している「ビジョン実現型人事評価制度®」は、給与を決めるためだけの評価制度ではありません。会社のビジョンを実現し、目標を達成するためにどんな人材が必要かを具体的に割り出し、そこへ到達するためにはどんな社員になってもらいたいか、そうなるためには何をすればよいかを、綿密に設定した人事評価制度です。

「ビジョン実現型人事評価制度®」の運営には、社員一人ひとりとのコミュニケーションが不可欠です。会社が「なってほしい」人材、そして自分が「こう成長したい」という姿に、現在どれだけ近づいているか、次に何をすればもっと成長できるのかを、評価時期ごとの面談を通して確認していきます。

次項では、新しい人事評価制度をつくったことでコミュニケーションが活発化し、女性が長く働ける会社づくりに成功した3つのケースをご紹介します。

女性が長く働ける会社づくりに成功した5社の事例

私は、人事評価制度や経営計画の専門コンサルタントとして、400社以上の中小企業の経営改革を支援してきました。その中で、成果を出すためには「女性の活躍」が避けて通れない企業が多く、実際、クライアント企業で働く女性社員の成長、活躍ぶりを見ていると目覚ましいものがあります。

この体験を通じて、中小企業こそ女性の活躍なくして成長はあり得ない、と感じています。以下に紹介する3社は、女性が活躍できる場づくりに成功した実例です。

成功事例1:アットホームな雰囲気を崩さない理想の制度づくり

A社は、全国の催事やイベントに引っ張りだこの人気洋菓子店。多数の人が描く「お菓子屋さん」のイメージそのままに、A社で働くスタッフの多くは女性です。以前は、経験を積んだ女性スタッフが、結婚・出産を機に退職してしまうケースが後を絶ちませんでした。給与やステップアップの道筋を示す制度がなく、将来の不安から辞める女性が多かったのです。

A社は、「長く働けて、しっかりした将来のイメージを持てるスタッフを育成したい」という願いから、「ビジョン実現型人事評価制度®」を活用することにしました。「カジュアルな社風を崩さない制度作り」を目指し、制度設計においてはビジネス用語ではなく柔らかい表現を選ぶほか、今まであいまいになっていた育休制度等をしっかり作り上げることで、社員の間に安心感が生まれたといいます。

さらに、社員側に大きなメリットとなったのが、育成面談の場を設けたことです。「ビジョン実現型人事評価制度®」にとって、育成面談は「評価結果を聞く場」ではなく、「今後、どう自分を成長させていくかを相談する場」。対話を重視する女性社員たちの本音を聞く場としても活躍しました。

社員は「以前から風通しのよさを感じていましたが、育成面談で経営陣と直接話す機会を得たことは、大きなメリット」と語ります。育成面談を、会社のビジョンと方向性についてリーダーと社員が濃密に語れる一対一の場としたことで、社員が仕事と向き合えるかけがえのない時間が生まれました。

また、人事評価制度の刷新によって給与体系やステップアップの仕組みが整い、女性社員の定着率は向上しています。「カジュアルな社風」を手放さず、濃密なコミュニケーションを大事にした改革が女性社員の心をつかんだ事例です。

成功事例2:会社の組織力を高める仕組みづくり

地方都市に5店の美容室を構えるB社も、もともと女性が多い会社でした。出産などにより一度会社を離れた人がパートとして戻ってきてくれても、そういったベテラン陣を引っ張っていかなければならないのは、若手店長の仕事です。「古株」がパート、「若手」が店長という構造は、店長にとって指導しづらく、「リーダーとして何か足りないのでは」と悩むことも少なくありません。

しかし、「ビジョン実現型人事評価制度®」が導入されてから、指導面での悩みを抱えていた若手店長が生き生きと働けるようになりました。それは、「誰に」「何を」「どう伝えればよいか」が、仕組みとしてもともと備わっている制度だからです。面談時に使う「育成面談シート」、各個人の目標設定に使う「チャレンジシート」や「育成シート」を使い、ベテランにも、新人にも、言うべきことを明確に伝えることができるようになりました。

その結果、会社全体のチームワークも強化されました。それは、リーダーが参加する戦略会議である「アクションプラン会議」に、店長のみならずスタッフの代表者を数人ずつ入れたことによります。「みんなで会議を重ねることで、スタッフ全員が会社の経営に関わっていくのだという意識が強くなり、ビジョンが根付いてきた」と、B社の社長は言います。

「ビジョン実現型人事評価制度®」では、会社の理念やビジョン、経営計画を、社員全員にわかりやすく提示します。そして、目標達成のためにどんな人材を育成すべきか、明確に伝えます。よって、社員には当事者意識が生まれ、自立し成長しようという意欲が高まるのです。

会社全体のチームワークや現場の指導力が回復・改善されたのは、広い意味での「コミュニケーションの強化」のおかげといっていいでしょう。「ビジョン実現型人事評価制度®」は、制度自体がコミュニケーションのツールなのです。

成功事例3:女性リーダーがどんどん育つ仕組みづくり

百貨店やドラッグストアの化粧品売り場を華やかに演出するための什器を作るC社は、女性の感性が必要不可欠な会社です。社員のうち半分が女性、そのうち3分の1以上がワーキングマザーという人員構成で、子どもの都合で急な時短勤務となっても次の日に長めに働いて調整するなど、もともとフレキシブルな働き方が可能な会社でした。

しかし、柔軟な対応が許される分、課題もありました。例えば、社長が独断で給与を決めていたり、上司から指導してもらえず「何をしたらよいかわからない」と新人が混乱したり。実際、若い人を雇っても2、3年で辞めてしまうという悩みがありました。その状況が、「ビジョン実現型人事評価制度®」を導入してから変わったのです。

しっかりとした評価制度の導入で、名ばかりリーダーでは務まらなくなると、もともと実力を伴っていなかったリーダーの中には、辞めていく人もいました。その一方で、確実に取り組みを実行する女性たちが頭角を現し、2人の女性社員がそれぞれ部長、リーダーに昇格。会社のビジョンが明示されたことで、「目標達成のため頑張ろう」と貪欲になる女性社員も増えてきました。

また、制度導入によって役割が明確化されたことで、採用されたばかりの新人にも「あなたには、こことここを頑張ってほしい」と明確に指導できる環境になり、定着率が高まりました。もっとも、若い人の定着の良さは、ひとえにリーダーや社長を中心とした評価者によるコミュニケーションのたまものです。育成面談を実施し、会社の方向性や目指すべき人材像を繰り返し伝えることで、スタッフの中に将来への安心感が生まれました。

さらに、一人で仕事をしがちな設計やデザインといった部門にもあえてマネージャーを置くことで、大きな効果がありました。以前は問題を感じた人がここに経営陣へ相談していましたが、マネージャーを通すという仕組みを活用することによって、組織にまとまりが生まれたのです。

こうして、制度導入によるコミュニケーションの活性化が、組織を一層強くする結果となりました。

成功事例4:社員が理念やビジョンを学び共有できる環境づくり」

D社はある地方の小売業。スタッフはアルバイトも含めて70名ほどですが、「ビジョン実現型人事評価制度®」を導入してから、会社の業績が前年を上回る年が続いています。コロナ禍にあっても、一人の退職者も出していません。

この企業が女性スタッフを惹きつけているポイントの1つめは、会社が理念やビジョン、経営計画、戦略などを全スタッフに開示し、個々人のキャリアプランにリンクさせていることです。「事業を通じて地域の人々のライフスタイルを豊かにする」が経営理念で、実現のための道筋、手段を「経営計画」として明文化し、また10年先までの売上、利益、人員計画を数値で明確化しています。

経営計画は、スタッフ全員でシェア。さらに経営計画の実現に向け、個人の役割を「評価基準」として明示し、評価を行っています。全スタッフが「どうして自分がこの仕事をしているのか」、「どうすればもっと成長できるのか」を理解できる体制が整っているのです。

また、「賃金制度」の公開によって、3年後、5年後の長期のキャリアプランや生活設計が可能になっています。これも、女性がモチベーションを持続させられる要素となっています。

さらに、会社の理念やビジョンを学び、共有する場が定期的に設けられていることもポイント。年1回の「経営計画発表会」、毎月のスタッフ勉強会など、上司としっかりコミュニケーションをとりながら、行動理念や指針を学べることが、成長サポートにつながっています。

意思疎通の場面がたくさんあることで、コロナ禍による店舗の営業時間短縮を行う中でも、自社店舗の存在価値を高めることに成功しています。女性スタッフたちが主体的に「自宅で過ごす時間を充実させるためのアイデア」や「商品の活用方法」などを顧客に発信したのです。

このような努力が会社の収益という「結果」に結びつくことは、女性スタッフたちにとって大きな出来事でした。自分たちの仕事の意義と必要性を改めて実感でき、モチベーションの維持や向上つながっています。

D社が行った「経営計画発表会」について、具体的な内容例は、以下をご参照ください。
「経営計画発表会」の3つの目的と成功の5つのコツ

成功事例5:チャレンジ面談を通じたコミュニケーションの充実

E社は、約50名の社員がいる機器メーカーです。女性社員は約20名。この会社では、「ビジョン実現型人事評価制度®」を運用する中で、「チャレンジシート」というツールを活用して上司が部下の成長を支援していました。

チャレンジシートとは、社員が自身の評価結果に基づき、3カ月ごとにスキルアップの目標や解決すべき課題とプロセスを記入するものです。その進捗を、直属の上司が毎月「チャレンジ面談」で確認し、支援を行います。

そんな折、コロナ渦で緊急事態宣言が出て、営業は顧客と接触する機会が激減。会社の業績も低迷します。ところが、社長は「こういう時こそ成長のチャンス」と社員を鼓舞し、チャレンジシートを中心とした評価制度の運用をさらに強化していきました。

社長は、テレワーク中の社員に対しても、zoomなどを通じたチャレンジ面談を徹底していきました。なるべく多くの面談に社長自ら加わり、劇的な環境変化に応じた課題の変更や、その推進方法をアドバイスしていったのです。

こうした対策を進める中で、これまで管理や営業支援的な業務を担当していた女性社員が、輝きを放ち出しました。顧客へのメールやDMを通じた受注の仕組みづくり、販促物の企画・作成など、対面営業が制限するなかでも会社の業績アップにつながる役割を担うようになっていったのです。

これら試行錯誤しながら確立した新たなマーケティングの仕組みもあり、業績は上向きになってきています。社長の熱い想いは、たとえ社員がテレワーク中であっても届くのです。そして、その想いを受け止め、行動したのは、他ならぬ女性社員でした。

E社が活用したチャレンジシートの具体的な内容については、以下をご参考ください。
チャレンジシート(目標設定シート/目標管理シート)の作り方【目標例付き】、たった3項目で社員の成長を加速!

おわりに:女性活躍のカギは、コミュニケーションを活性化させる制度運用にあり

以上、女性が活躍する5社の取り組みについてご紹介しました。「しっかりとした仕組みの導入が女性の活躍につながる」、「しかもその仕組みの成功のもとは、コミュニケーションの活性化である」ということが、お分かりいただけたと存じます。人のモチベーションや能力は、環境によって大きく左右されるのです。

女性活躍のため、様々な制度を導入しようとすると、経済面での不安が頭をもたげてきます。しかし、「コミュニケーションを活性化させる」という取り組み自体は、そうお金のかかるものではありません。E社の取り組みから、そのコミュニケーションは、直接対面でなくても十分効果があることが分かります。

コミュニケーション活性化の仕掛けを、人事評価制度の導入で作りましょう。それは女性の活躍のためだけではありません。会社の成長へダイレクトに関わる取り組みとなります。それは、コロナ禍のような不況にあっても変わりません。

最後に、制度は必ず「設計と運用をセット」にしてください。どんな効果的な制度でも、設けるだけでは結果につながりません。今回ご紹介したような人事評価制度を導入する際は、継続して運用するようにしましょう。

人事評価制度の考え方や仕組みづくりの方法については、以下の記事をご参考ください。
人事評価制度の作り方を一から解説(成功事例を4社紹介)- 人材を育成するための仕組み作り

この記事を監修した人

代表取締役山元 浩二

経営計画と人事評価制度を連動させた組織成長の仕組みづくりコンサルタント。
10年間を費やし、1,000社以上の経営計画と人事制度を研究。双方を連動させた「ビジョン実現型人事評価制度®」を480社超の運用を通じて開発、オンリーワンのコンサルティングスタイルを確立した。
中小企業の現場を知り尽くしたコンサルティングを展開、 “94.1%”という高い社員納得度を獲得するともにマネジメント層を強化し、多くの支援先の生産性を高め、成長し続ける組織へと導く。その圧倒的な運用実績を頼りに全国の経営者からオファーが殺到している。
自社組織も経営計画にそった成長戦略を描き果敢に挑戦、創業以来19期連続増収を続け、業界の注目を集めている。
著書に「小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』(あさ出版)「小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方」(日本実業出版社)などがある。2020年2月14日に15刷のロングセラーを記録した著書の改訂版である「【改訂新版】3ステップでできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方」(あさ出版)を出版。累計14万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。
1966年、福岡県飯塚市生まれ。

個人ブログ:https://jinjiseido.co.jp/blog/

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