給与制度の「等級(グレード)」とは?等級の設計の仕方

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給与金額の根拠となる等級(グレード)を、きちんと定めている中小企業はどのくらいあるでしょうか。等級をしっかり定めて社員に公表し、それをもとに給与を決めるようにすれば、給与制度の透明性を確保でき、社員の企業に対する信頼度は高まります。次に目指すべき姿が明示されるので、モチベーションも維持できるでしょう。等級の設計方法を解説します。

※「給与制度」にメスを入れるには、「経営計画」と「評価制度」の仕組みが整っていることが前提となります。なぜなら、評価者であるリーダーが部下の貢献度を適正に評価できなければ、「給与制度(賃金制度)」の効果的な運用が難しいからです。「経営計画」と「評価制度」の仕組みをまだ整えていないのでしたら、以下の記事からお読みいただくことをおすすめします。

ビジョン実現型人事評価制度・経営計画書の作り方総まとめ

等級(グレード)とは

等級とは、仕事のスキルや役割に対して、会社が期待するレベルを段階的に表したものです。各社員に、能力や職務の範囲に応じて等級を与え、それをもとに給与を決めます。

等級をどのように設計するかは、会社によって違います。例えば、勤続年数を等級決定の大きなベースにしている企業であれば、年功序列的な給与制度を持っているといえますし、業務成績に重きを置くようなら、成果主義的な等級制度であるといえるでしょう。

等級制度を設計するときは、「会社はどんな人材を大事にするべきか」「社員に、どんな人材になってほしいか」を考え、人材の理想像を反映していく必要があります。能力や仕事スキル、役割などあらゆる面を考慮して、等級を定めていきましょう。

中小企業の「給与設計」4つのステップ

中小企業が等級を定めた給与設計をするためには、4つのステップを踏む必要があります。「等級の段階数を決める」ことから始めて、「各等級の給与を決め」、「役職手当を決定」し、最後に「基本給与を決め」ることとなります。

ポイントは、ステップごとに完璧に等級数や給与を決めることはないということです。最初はざっくり、理想的な等級や給与を当てはめていって、最終的な調整のときにしっかりと定めましょう。各ステップについて詳しく解説します。

1. 「等級(グレード)」の段階数を決める

最初に、等級ごとに求める仕事レベルを明確にしましょう。等級の段階数を決めるときには、次の2つの目的を意識します。

  • 社員の成長の質とスピードを高める
  • 会社の5年後のビジョンと目標が達成できる組織を作る

「5年後のビジョンと目標を、具体的に考えたことがなかった」という経営者の方は、ぜひ考えてみてください。会社の5年後の姿を思い描けてこそ、「5年後にどんな人材が必要か」が明確になるというものです。理想の人材を具体的に描けてから、等級づくりに戻りましょう。

3つのステージごとに等級数を決める

理想の人材像を思い描くことができたら、まず、等級の数を何段階にするかを決めます。といっても、等級数をいきなり決めるのは難しいので、3つのステージごとに等級数を考えていくとよいでしょう。

  • S(スタッフ)ステージ:役職がない一般社員
  • L(リーダー)ステージ:主任・係長などの管理職ではないリーダークラス
  • M(マネジメント)ステージ:課長・部長などの管理職にあたるクラス

等級は、人材育成のためのステップです。そこで、次のような手順で、等級数とそれぞれの等級に求める仕事レベルを設定します。

まず、社員の成長のプロセスを具体的にイメージし、そこにグレードを当てはめていきながら決めるといいでしょう。例えば、あなたの会社に新入社員が新卒で入社した場合、課長などのマネジメント層になるにはどのようなステップを踏んで成長していくのが理想でしょうか。その成長過程に求める仕事をイメージしながらまとめてみましょう。

想定されるレベルは、例えば、次のようなものです。

[レベル1]
上司や先輩社員の指示に基づいて、一つひとつ確認、チェックをしてもらいながら、業務をこなす状態

[レベル2]
配属された部署の基本的な業務の流れを理解し、担当する業務は一人でできる状態

[レベル3]
部署の業務は一通り把握したうえで、部署やチームのことを配慮しながら仕事を進められる。

[レベル4]
部署の中で成果を期待できる一人となっている。後輩へ業務上の指導・アドバイスを適切に行える状態

[レベル5]
チームやプロジェクトなどのリーダーとして、複数のメンバーを取りまとめて推進し、成果を期待できる。リーダーシップを発揮し始めている状態

どのレベルから等級を引き上げるのか、またどの等級から役職をつけるべきかなども、ここで考えていきます。

等級数が多いとき、少ないときのメリット・デメリット

等級が一段階以上あがることを「昇格」といいます。会社が定める一定の基準を満たした社員は昇格し、給与もアップします。

等級数は、多いほうが昇格の機会を増やすことができます。等級に合わせて給与の幅が決まりますから、等級数が多いということは、「昇格」したときの昇給幅が小さくなるため、「昇格」の基準をより緩やかに設定できます。これを社員にアピールできれば、モチベーションアップにつながるでしょう。

その一方、昇給額は微小になりがちですから、金額面がモチベーションを上げる要素にはなりにくい点がデメリットになります。また、等級数が多いほど評価基準も多くなりがちなので、評価内容のボリュームが増え、リーダーに負担がかかることが予想されます。

一方で、等級数が少ないほうが等級アップ時の昇給額が大きくなりますし、等級ごとのレベルが明示しやすく、評価をする上司の負担は軽減します。しかし、昇格のハードルは高くなってしまうため、「いったい、いつ次のレベルに到達できるのか」と、社員のやる気を減退させてしまうかもしれません。

役職と等級は一致させると運用しやすい

中小企業の場合、「3等級以上であれば主任」などと固定させて運用するべきです。役職と等級を個別に運用してしまうと、「役職は与えられないが昇給させてあげたい」といった社長の温情的な処遇が生まれてしまい、均衡を欠くためです。しかし、社員のモチベーションを維持するためには、温情処置を継続したほうがよいと考える経営者もいることでしょう。

例えば、役職と等級を個別に運用すると、次の3つの弊害が起きてしまいます。

  • 1、等級別の仕事レベルとは関係なく役職者が増える可能性がある
  • 2、役職を与えなくても昇格させてしまえば、上位等級に低い役職者や役職のない者が昇格してしまう可能性がある
  • 3、役職と等級で別々の評価が必要になり、評価方法と賃金への反映方法が複雑になる

3つの弊害が起きてしまうと、評価方法が不透明になり、優秀な若い人材に不満が溜まる可能性を否定できません。実はこれが、中小企業がある一定の規模から成長がストップしてしまう大きな要因となっています。

だからこそ、等級と役職は一致させ、等級レベルの中にリーダーシップや部下育成など、役職者として必要な要素を盛り込みましょう。シンプルなルールで、わかりやすい体系にしておいたほうが社員の理解が進み、成果にもつながります。

2. 各「等級(グレード)」の給与を決める

等級を作り終えたら、各等級の給与金額を決めていきます。主に決めるのは、固定給の部分です。時間外手当や休日勤務手当、通勤手当については仕事の貢献度や表かと関係ないため、この時点では対象外とします。

各等級の基準額を設定したうえで、等級ごとに「最低額」と「最高額」を設定し、矛盾がないか表にしてチェックしましょう。手順ごとに解説します。

各等級の基準額を決める

給与はまず、各等級の基準額からざっくり決めていきます。この段階ではあまり悩まず、大まかに目安の金額を割り振りましょう。あとで、シミュレーションをしながら調整をしていきます。

給与を決めるポイントは、その等級や役職に求められる仕事の対価として、どのくらいの金額がふさわしいのかという点です。「求められる仕事を遂行できたら、いくら給与をあげたいか?」という視点で考えていきましょう。

また、各等級の標準額ができたら、等級間の金額の差額も出してみましょう。上位等級に行くほど差額が大きくなっていたほうが、この後の賃金テーブルを設計しやすくなります。

理由は2つあります。ひとつは、上位の等級に昇格したほうが、下位で昇格するより大きな昇給額とできるため。もうひとつは、上位職の方が評価結果による差額を大きくしたいためです。

等級ごとに上限額と下限額を決める

次に、等級ごとに賃金の上限と下限の金額を決めましょう。同じ等級の社員が全く同じ給与では、評価結果や実力による差をつけることができません。

具体的には、先ほど決めた等級ごとの標準額の上下に、均等の金額で幅をつけていきます。「3等級、主任であれば、最低でも29万円はあげたい。標準額は32万円と決めたから、差額は3万円だ。ということは、上限は32万円にプラス3万円で、35万円としよう」といった具合です。これも、この段階では経営者の感覚で金額を設定して構いません。

等級ごとに上限額と下限額を定め、また等級間の差額を出したら、一覧表にします。一覧表で確認しておきたいのは、昇格ごとにどのように給与が上昇するのか、全体の大きなイメージです。

また、上下の等級間においての給与差、上限額と下限額の重なりなどを把握しましょう。現時点では、下位等級の上限額が上位等級の下限額を上回っていない状態が理想です。この表をもとに、具体的な支給項目ごとに賃金額を設定していきましょう。

グレード別賃金範囲表
グレード別賃金範囲表

3. 役職手当を決める

次は、役職手当の金額を決めます。各役職の仕事レベルに応じた、経営者自身の金額イメージをもとに、ざっくりと決めてみましょう。全て決めたら俯瞰して、調整を加えていきます。

役職手当の詳しい決め方は、次の記事を参考にしてください。
役職手当の決め方と設定方法、社員を育てる賃金制度の仕組み

4. 基本給与を決める

ステップ1、2でざっくり決めたグレードごとの標準金額と、3で定めた役職手当を、あわせて3つの支給項目に分類します。「本給」と「仕事給」、そして「役職手当」です。本給と仕事給を合わせて「基本給」とします。

本給と仕事給の決め方について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
中小企業の基本給の決め方、本給と仕事給の比率が重要!

おわりに

等級をもとにした給与体系は、複雑になりがちです。本記事で紹介したように、最初は大づかみのイメージで等級や給与を設定してしまい、一覧表にしてしまうのをおすすめします。完璧なものでなくても、一覧にすることによって、制度として成り立つかどうか、無理が生じる面がないかなど、検討しやすくなります。

等級表ができたなら、決して経営者間での共有に終わることなく、全社員に公表し、いつでも、どんな社員でも確認できる体制を整えましょう。そのうち、「うちの会社では、どんなふうに給与が決まっているのかわからない」と不満を抱える社員が、一人もいなくなります。

ただし、給与制度は設計すれば終わりではありません。運用してこそ効果が発揮されます。また、冒頭でも述べたように、給与制度を改善する前に、「経営計画」と「評価制度」の仕組みを整えておくことも必要です。評価制度も運用してこそ効果が得られるものなので、必ず「設計」と「運用」はセットで実施しましょう。

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