成果主義の人事評価制度が失敗する理由、成果主義をやめて成功した事例

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結論から述べると、成果主義とは仕事の成果に応じて報酬を決定する仕組みのことです。人事評価制度に深く関わる指針で、制度の運用に大きく影響します。

日本の企業の人事評価制度に成果主義が本格的に導入されてから、30年ほどが過ぎました。年功序列の古い給与制度を撤廃すれば日本の景気も良くなるのかと思いきや、そうでもないのが実情です。成果主義が合わないと感じている経営者もいらっしゃることでしょう。

それでは、成果主義もまた、正しい人事評価の方法ではないのでしょうか。成果主義の人事評価制度が失敗する理由を解説し、成果主義をやめて成功した事例をご紹介します。

成果主義とは?

成果主義とは、仕事の成果に応じて報酬を決定する仕組みのことです。例えば営業部門であれば、成果の指標を決めるのは営業成績です。成果主義のもとでは、成約件数や金額の多い人ほど評価が良くなり、月給やボーナスが上がり、昇進も早くなります。

成果主義では、勤続年数や年齢などより会社への貢献度が重視されます。そのため、生え抜きで何十年も頑張ってきた社員よりも、中途で入社した新人が先に昇格するといったことがありえます。

なぜ成果主義の人事評価制度が失敗するのか?

なぜ成果主義の人事評価制度を導入して、失敗するケースが多いのでしょうか。それは、成果主義のメリットとデメリットについてよく検討することなく、ただ社員のやる気をお金でコントロールしようとするためです。

成果主義を導入しても業績が振るわないと悩んでいる経営者の中には、「お金が一番効果的」と、お金で社員を動かそうとしてしまう方が多くいらっしゃいます。確かに、人は「たくさんお金がもらえる」と思えれば、頑張って働くでしょう。しかし、その反面、この事実が立ちはだかります。

お金で動く社員は、お金で会社を去っていく

これが、長年この分野に関わってきた私の結論です。成果主義を打ち立てると、社員が働く目的が全て「お金」になってしまいがちです。すると、成果が得られているうちはバリバリに働いても、業績が乏しくなれば応酬が下がり、やる気を失っていきます。また、「もっとお金が欲しい」と考え、より条件のいい会社へ転職してしまう社員も出てきます。

私は、成果主義のメリット面ばかりを見て社員のやる気をお金でコントロールしようとし、優秀な社員を失った会社を何社も見てきました。目の前にお金をちらつかせながら社員を働かせるやり方は、逆効果となる場合がほとんどです。成果主義のデメリットもあわせて確認し、「本当に成果主義でよいのか?」と、じっくり検討することが重要ではないでしょうか。

成果主義のメリット

成果主義のメリットは、以下の通りです。

優秀な人材の成果を正当に評価できる

年功序列や生え抜き優遇の評価制度では、「中途採用だから昇進は難しい」「新人だから、昇進には時間がかかる」といったことが常識で、新人や中途採用者のやる気をそぐ原因になってしまいます。成果主義であれば、誰にでも把握できる数字をベースに評価されるので、納得感が高まり、優秀な人材のモチベーションをさらにアップさせることができるでしょう。

また、成果主義を導入していることを採用段階でアピールすれば、「この会社であれば正当な評価をしてもらえる」と、転職先を探している優秀な人材が集まってきます。成果を上げられない社員は去っていき、優秀な社員ばかりが残る会社となるでしょう。

年功序列による人員コストを抑えられる

昔ながらの年功序列による報酬制度を敷いている会社では、会社に貢献していなくても勤続年数が長いというだけで高収入を得られる社員が出てきてしまいます。成果主義を導入すれば、報酬に見合わない仕事をしている社員の給与を減らせるため、人員コストを削減できます。

また、年功序列の報酬制度は、若くて優秀な社員からしてみれば不満の種です。勤続年数で給与を決めるのではなく、仕事の成果で決めるようにすれば、若手の不満も軽減します。

社員間にライバル意識が芽生え、職場が活性化する

成果が報酬の金額に直結するため、社員間には競争意識が芽生えます。良い意味で刺激が生まれ、職場の空気は活性化するでしょう。

社員みんなが目的意識を持って働くためには、職場の空気が重要です。暗くよどんだ雰囲気の会社では、モチベーションが維持できません。みんなが常に切磋琢磨する、良い意味での緊張感が生まれれば、常にやる気にあふれた職場環境を維持できます。

生産性が向上する

上司との関係性が昇進に大きく響くような職場では、「上司よりも先に帰るのはNG」といった雰囲気が生み出され、ダラダラ残業を生み出す原因になります。常に上司の顔色をうかがいながら仕事をするようでは、生産性も、仕事の効率も悪いといっていいでしょう。

成果主義のもとでは、成績が給与アップや昇進のベースになるため、上司の意向が評価に絡むことはありません。社員は数字だけを追いかけていればよいので、無意味な残業は必要なくなり、過剰な報連相もなくなります。結果、生産性が向上します。

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成果主義のデメリット

成果主義には、以下のようなデメリットもあります。成果主義のデメリットは、メリット全てを打ち消してしまうような、深刻なものです。順に解説しましょう。

社員がお金しか見えなくなる

成果主義は、お金で動く社員を作る仕組みです。これが一番危険で、致命的なデメリットであるといえます。

本来、仕事をする目的は、お金だけではないはずです。「自分のスキルを磨きたい」「人間関係のよい職場で楽しく働きたい」「未知の領域で自分の可能性を試したい」「理念に共感できる会社に貢献したい」など、さまざまな理由で、人は会社に就職します。

しかし、成果次第で報酬が変わるとなると、目的が「より多くのお金を稼ぐ」ことに集約されてしまいます。お金だけが、自分の評価の指標になってしまうためです。

今の経済環境を考えると、「成果を上げろ」といっても、なかなか難しい時代といえます。総人件費を下げざるを得ない会社も少なくありません。すると、お金しか見えなくなった社員は「今の会社にいる限り、自分の給与は上がらない」と見切りをつけ、より条件の良い会社へと去っていくでしょう。

つまり、成果主義は、モチベーションを阻害し、帰属意識を育てない、極めて重大な欠陥を持つ仕組みといっても過言ではありません。つまり、社長自ら、お金で動く社員を作ってしまうのです。

チームワークが育たない

成果主義は、人を出し抜いてよい成績を上げるのも良しとします。すると、個人プレーに走る社員が続出し、チームワークがおろそかになる恐れがあります。その結果、チーム全体で取り組む目標が、達成されなくなる場合も多いでしょう。成果主義は、日本企業の美点とされていた「一丸となって取り組む」面を、破壊してしまうのです。

また、いわゆる「一匹狼」の成績が良い場合、昇給に合わせて昇進させざるを得ません。すると、一匹狼型の社員は新人や部下の育成に無頓着なので、会社全体の成長が望めない事態に陥ります。

数字に表れない会社への貢献度を評価できない

成果主義を導入しやすいのは、数値での目標設定が可能な部署だけです。バックオフィス系の部署に成果主義を当てはめるのは、難しいといえます。

だからといって、いわゆる花形部署の給与だけを、成果主義によって派手にアップさせるのは問題です。その不公平感から、バックオフィス系の社員がモチベーションを下げてしまうことは目に見えています。バックオフィスの雰囲気は、会社全体の空気に直結します。

成果主義をやめて成功した事例

私のクライアントA社にも、かつて成果主義を導入し、失敗した経験を持つリーダーがいました。以前、彼が勤務していた会社では、結果を重視する成果主義的な人事制度を導入しており、それでかえって社内の雰囲気が悪くなり、退職者も相次いだともこと。その結果、会社の業績まで悪化しました。

しかし彼がA社に入り、「ビジョン実現型人事評価制度®」が導入されると、「この仕組みがなかったら、今の業績は絶対に実現できなかった」と語るほどの成功がもたらされたのです。導入3年で、売り上げは3倍にもなりました。

業績アップの原動力となった「ビジョン実現型人事評価制度®」は、会社のビジョンと理念を人事評価制度に反映させるものです。A社の社長は、制度に取り組む前に、22ヶ条からなるクレド(会社の価値基準、行動指針を明文化したもの)を完成させていました。クレドと人事評価制度を連動させることで「社員がやるべきこと」が明確になり、全社員が成長目標に自ら取り組めるようになったのです。

3倍もの業績アップを実現した「ビジョン実現型人事評価制度®」の詳細は、以下の記事にまとめてあります。ぜひ参考にしてください。

ビジョン実現型人事評価制度®・経営計画書の作り方総まとめ

人事評価制度の作り方については、以下の記事も併せてご覧いただくとより効果が高まります。
人事評価制度とは「人材を育成するための仕組み」、人事評価制度・経営計画の作り方まとめ

おわりに

成果主義の問題点がお分かりいただけたでしょうか。成果主義には、確かに一部の社員のモチベーションをアップさせる面がありますが、それは優秀で、自分で能力を開花させる実力のある社員だけ。そしてそんな社員は、優秀であるがゆえに、そのうちもっと報酬のいい会社へ転職してしまうでしょう。

人を大事にしたいと考えたら、成果主義は潔くやめることです。そして、「そもそもこの会社を、どんな企業にしたいのか」から考えましょう。理念やビジョンが定まれば、理想の人材像もおのずと見えてきます。それを具体的に提示するだけで、社員は「何が求められているか」を正しく理解することでしょう。

この記事を監修した人

代表取締役山元 浩二

経営計画と人事評価制度を連動させた組織成長の仕組みづくりコンサルタント。
10年間を費やし、1,000社以上の経営計画と人事制度を研究。双方を連動させた「ビジョン実現型人事評価制度®」を480社超の運用を通じて開発、オンリーワンのコンサルティングスタイルを確立した。
中小企業の現場を知り尽くしたコンサルティングを展開、 “94.1%”という高い社員納得度を獲得するともにマネジメント層を強化し、多くの支援先の生産性を高め、成長し続ける組織へと導く。その圧倒的な運用実績を頼りに全国の経営者からオファーが殺到している。
自社組織も経営計画にそった成長戦略を描き果敢に挑戦、創業以来19期連続増収を続け、業界の注目を集めている。
著書に『小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』(あさ出版)、『小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方』(日本実業出版社)などがある。2020年2月14日に15刷のロングセラーを記録した著書の改訂版である『【改訂新版】3ステップでできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』(あさ出版)を出版。累計14万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。
1966年、福岡県飯塚市生まれ。

個人ブログ:https://jinjiseido.co.jp/blog/

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私たち日本人事経営研究室は、"人間成長支援"をミッションとし、
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日本人事経営研究室 代表取締役 山元浩二氏

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