実績につながる「経営計画」の作り方、失敗パターンと成功するためのポイントを解説|人事評価制度・賃金制度のノウハウ | 日本人事コラム

実績につながる「経営計画」の作り方、失敗パターンと成功するためのポイントを解説

  • 経営計画を作ったのに成果が出ないのはなぜ…
  • 経営計画を作ったものの、どう活用すればいいかわからない…

本記事は、こうした経営計画の悩みについてお答えします。

最近、経営計画を作成する中小企業が増加してきましたが、経営計画を経営の実践に活用できている会社はごくごくわずかです。おそらく、実践に活かせている中小企業は5%未満ではないかと思われます。なぜそうなってしまうのか、そして実践するための基本的な考え方について解説します。

経営計画とは?

経営計画とは、経営目標や会社のビジョンを実現させるための道しるべです。目標をいつまでに、どのように結実させるかを具体的に示した計画書をつくることは、成長を目指す企業にとって必要不可欠といえます。

経営計画がなければ、どんなに立派な目標やビジョンを掲げていても、それは絵に描いた餅になってしまうことでしょう。そうなると、社員は具体的にどう動けばよいかがわからず、見当違いの頑張り方をしたり、路頭に迷ったりしてしまいます。その結果、業績は振るわず、社員の不満も高まりかねません。

「経営計画」を作成・運用すべき3つの理由

なぜ「経営計画」の作成・運用が必要なのでしょうか。その理由は、以下の3つです。

社長と幹部の歩みを一つにできる

「なぜ、うちの幹部はわかってくれないんだ!」「指示しているのにリーダーが全く動かない」と悩んでいる社長は多いでしょう。社長とリーダーの熱量が違う最大の原因は、勉強量のギャップにあります。

会社を成長させようと試行錯誤している社長は非常に勉強熱心です。さまざまな方法でいろいろなルートから情報収集を行っています。

一方、中小企業の幹部、リーダーはどうでしょう。熱心に寝る間も惜しんで勉強し、自ら外部の研修や異業種交流会に行って情報を仕入れているような人は、なかなかいません。

この社長と幹部の圧倒的な勉強量の差が、何をやるにしても社長の意図が伝わらず、思い描いているように幹部が行動してくれない最大の要因です。しかし、「経営計画」を作成・運用すれば、社長と幹部の意識の差を埋め、会社の成長のために歩みを一つにできます。

社長が覚悟を決められる

「経営計画」は幹部やリーダーと一緒に作成します。また、完成後に社員全員の前で発表します。発表会は、社長の思いと数年後の会社の姿を、数値も含めて「これを絶対にやり遂げるぞ」と幹部や社員全員へ宣言する場です。

社長はいわば「経営計画」を通じて自分の意思と覚悟を社員全員に伝えることになります。これによって、「絶対にやり抜かなければ」「達成できなければ社員たちに顔向けできない」と自らを奮い立たせることができます。

特に中小企業にとって、このように社長が覚悟を決めることの効果は非常に大きなものがあります。なぜなら中小企業の業績は、99%社長の力で決まるからです。社長が将来の目的を明確にし、絶対に達成するという意思を固めなければ、達成はできません。そして、この覚悟を最後まで貫き通すことが実践の継続につながります。

中小企業が伸び悩む大きな原因の一つに、決めたことを成果が出るまで継続できない点が挙げられます。「経営計画」を作成・運用すれば、この弱点に打ち勝つことが可能になります。

まわりからの支持を得られる

長期的に会社が存続するために必要なことは、まわりから会社の存在が認められていることです。「まわり」とは、お客様や取引先、その他協力会社や金融機関など会社と関わる人全てです。

このような人たちから支持を集め、社会からその存在を認められている、その価値を認められている会社でなければ、30年、50年、100年という長期にわたって存続していくことは難しいでしょう。

このように会社の存在をまわりに認めてもらいながら会社の付加価値を上げていくために必要なものが「経営計画」なのです。

「経営計画」を社員に浸透させ実行してもらうことによって、会社の理念や考え方、こだわり、価値がまわりに知られていきます。そこに共感したお客様や取引先があなたの会社を支持し、熱狂的なファンとなっていきます。

ファン層がどんどん広がっていけば、会社の認知度と信頼度が高まります。そして社会で認められる存在となり、会社の付加価値が向上していくのです。

実績につながる経営計画とは?

経営計画に関する書籍を多数読んだり、自ら研修に参加したりして気づいたことがあります。それは、経営計画のつくり方を教えてくれる書籍や研修はありますが、その実践方法や活かし方、成果の出し方について具体的に教えてくれるものは少ないということです。

結果、経営計画を作成するだけでストップしてしまう企業が多くなってしまうのは当たり前でしょう。すると計画作成がゴールになり、実践・運用はおろそかになってしまいます。しかし、成果を出してこその経営計画です。実践がなければ意味はありません

具体的な経営計画の作り方は、下記の別記事に譲ることにしましょう。この記事では、とくに経営計画を実践するための考え方をご案内しています。

人事評価制度とは「人材を育成するための仕組み」、人事評価制度・経営計画の作り方まとめ

実績につなげるための経営計画のステップ

経営計画を作成する経営幹部

経営計画を実績につなげるためには、4つのステップで考える必要があります。成果を出すための4ステップをご案内しましょう。

ステップ1:「経営計画」が必要だと実感する

経営計画の必要性を実感します。ここで多くの中小企業は、経営計画に関する書籍やセミナーを活用するでしょう。

ステップ2:「経営計画」を作成する

経営計画を作成します。ほとんどの会社は、ここまでは実行できるものの、この次のステップである「実践」に進めていません。

ステップ3:「経営計画」を実践する

経営計画を実践します。ステップ2とステップ3の間には高いハードルがあり、「経営計画」の完成がゴールとなっている書籍やセミナーを頼りに経営計画を作ってきた会社は、なかなかここまでたどり着けません。

このステップ3の手前で多くの企業が脱落するため、乗り越えれば経営計画を実践する稀少な企業となるでしょう。

ステップ4:業績、成果につながる

正しい方法で経営計画を実践すれば、成果や実績につなげることができます。。経営計画は本来、ここがゴールなのです。

要注意!陥りやすい「経営計画もどき」3パターン

ステップ2の「作成」からステップ3の「実践」までの高いハードルを乗り越えるためには、すぐに実行できて成果が出やすい経営計画を作成することが必要になります。しかし、多くの経営計画は、数値や計画が示されているだけで、そのための戦略や社員が何をどう実行すべきかが示されず、起動力はありません。

さらに、本来の経営計画とはかけ離れたものを「経営計画」と称している会社も少なくありません。この「経営計画もどき」は、大きく次の3パターンに分類できます。

数値計画パターン

銀行向けに作った事業計画を「経営計画」と称して自社でも活用しようとするケースです。金融機関から融資を引き出すための事業計画書は、自社の理念やビジョンを実現するための経営計画とは目的が違います。これを活用しても、会社が「あるべき姿」に向かって発展することはないでしょう。

「理念・ビジョン・ミッション」強調パターン

理念やビジョンは掲げていても、それを実現するために必要な事業計画や戦略が欠けているパターンです。社長が崇高なビジョンを掲げ、想いも強いため、理念が社員にしっかり浸透しているケースも多いのですが、プロセスが明確になっていないため成果につながりません。

社員のモチベーションが高いのに成果につながっていない企業に多いパターンです。

業務規則集パターン

「接客ルール」「報告・連絡・相談のルール」など、会社の規則やルールをまとめたものを経営計画としているパターンです。ルールを定めて社員に守らせるのも大事なことですが、規則やルールをまとめただけでは、将来の会社の成長や発展を実現する経営計画とはならないでしょう。

実践できる経営計画の考え方3つのポイント

実践できる経営計画を作るために、次の3つを意識しましょう。

数値目標を入れる

「いつまでに」「どのくらい」会社を成長・発展させたいのかを数値で明確にします。この際、単年度の計画だけでは、目標達成のための計画とは言えません。5年以上先までの数値目標を明確にすることが大事です。

戦略を具体化する

数値目標を達成するためのプロセスが戦略です。現場の社員に動いてもらえるよう、戦略内容をきちんと文章化して全社員に示します。この戦略が正しく機能しているかを随時チェックするのが、社長やリーダーの役割です。

人材育成計画を盛り込む

会社を成長させたいのであれば、その成長に合わせて人材も成長させる必要があります。よって、人材をどのように成長させるかという「人材育成計画」も、必ず「経営計画」に入れるべきです。数値目標と戦略によって、人材に求める役割や成長スピード違ってきます。戦略を推進、実行し、成果を出せる人材を育てることが必要なのです。

社員が成長する人材育成計画の立てるのにもポイントがあります。詳しくは以下の記事をご参照ください。

社員が育つ人材育成計画・目標の立て方、評価制度を活用した人材育成

実績につながる!「ビジョン実現型経営計画」の3つの効果

私が提唱している「ビジョン実現型人事評価制度」では、「経営計画」を人事評価制度に落とし込むことで企業が本当に必要としている人材を明確化し、理想の社員を育てていきます。そこで重要となるのが最初に作成する「ビジョン実現型経営計画」です。

「ビジョン実現型経営計画」を作成・運用することで、以下の3つの効果が得られます。

効果1:社長とリーダーの実力向上

「ビジョン実現型経営計画」を作成し、3年、5年と地道に運用していくことで、確実に社長とリーダーの実力が向上します。実は、「経営計画」を「経営計画」通りに運用するのも、それなりのスキルと経験が求められます。最初はうまくいかなくても、コツコツ経験を積み重ねていくことで、社長とリーダーがレベルアップし、会社そのものの実力も高められるのです。

最初は思い通りに行くことの方が少ないかもしれません。しかし、容易に諦めてしまうと、会社が、そして社長と社員が成長する機会を逃してしまいます。時間がかかっても、諦めずにトライすることが重要です。

効果2:「経営計画」に沿って会社を成長させられる

諦めずにトライしていけば、そのうち「経営計画」に沿って会社を経営できるようになります。爆発的な成長は見込めなくても、確実に、着実な成長を会社が果たしていきます。

私自身、自社創業以来「経営計画」を作成・運用していますが、目標を実現できるようになったのは計画を立てた当初から2~3年が経過した頃です。私のクライアントの中で「経営計画」の数値計画を前倒しで達成できているのは5%。ほぼ計画通りのペースで成長しているのが10%。当初計画よりも遅れている会社が85%です。

最初はうまくいかないかもしれません。しかしコツコツと取り組んでいけば、確実に人材を成長させることができ、会社の継続的発展が叶います。

効果3:「自動成長装置」が会社に備わる

「経営計画」に沿った経営ができるようになれば、リーダーが自ら将来のビジョンを語り、成長化計画を立て、「戦略」を練って社長に提案し、部下を導いていくことができます。まるで自動成長装置が会社に装備されたような状況です。

自動成長装置が起動すれば、「リーダーは社長の思いをわかってくれない」といった嘆きは二度と生まれません。リーダーや社員が勝手に成長していってくれる、劇的な変化が生まれます。

なぜ劇的な変化が生まれるのか。それは、リーダーや社員が「経営計画」へ主体的に取り組んでいくうちに、会社の理念や方針、社員のあるべき姿がひとりでに心身へすり込まれていくからです。「こんなときは、こう動けばいい」が理解できた社員は、受け身社員を卒業し、自発的に取り組む社員へと変貌していきます。

地味にコツコツと取り組んでいけば、ある瞬間、劇的に社員が変わる瞬間を目にできる。私の提唱する「経営計画」は、そんな仕組みです。しかも、経営計画書はA4用紙一枚で完結します。経営計画書の作成方法については、以下の記事もご覧ください。

「経営計画」で社員の成長が実現した事例

ここで、「経営計画」を設けたことで社員の成長が実現した事例をご紹介します。成功するためのヒントが盛りこまれているため、ぜひ最後までお読みください。

A社は電気工具を中心としたリサイクルショップを埼玉や東京で展開している企業です。今では業界トップクラスの企業に成長し、フランチャイズ展開や他社へノウハウの指導などを行って業界注目の的になっていますが、以前は大きな問題を抱えていました。

その問題というのが、社員の育成です。社員のモチベーションがなかなか上がらず、「会社として一丸となって頑張る」という空気がどうしても作り出せませんでした。とうとう数年前には、1店舗のスタッフほぼ全員である10名が突然退職してしまいました。

社員が大量に辞めた当時マネージャーだった現社長は、辞めたスタッフの1人が漏らした「会社は俺たちのことを見てくれない」という言葉が耳から離れませんでした。そして、このことをきっかけに、会社を根本から変えていく覚悟をしました。

「ビジョン実現型人事評価制度」の実践で業界のリーディングカンパニーに

社長がまず取り組んだのは、経営者向けのセミナーや研修に参加したり、異業種交流会などで成功している社長の話を聞いて回ったりすることです。その中ではっきりしたのが、「会社を一つにまとめるためには理念が必要」ということでした。

10人ものスタッフが集団退職してしまったのは、彼らと理念が共有できていなかったことが最も大きな要因と気づいたのです。早速、社長は理念作りに取りかかろうと働き、私の本にたどり着きました。そこには「経営理念」の作り方が手順を追って具体的に書いてあり、さらにそれを社員に浸透させ、実践するための「経営計画」や「人事評価制度」についてもわかりやすく書かれていました。

社長は私のところへ相談に訪れ、私は直接コンサルティングを行いながら「経営計画」づくりをスタートさせました。社長が考えた“リユースサービスを通じてお客様に幸せをもたらします”という「経営理念」に基づき、“全国ナンバーワン”という高いビジョンを明確に定め、数値目標や「人材育成計画」を盛りこんだ「経営計画」を作成しました。

「経営計画」を進めるにあたって社員との衝突はありましたが、社長が熱意を持って社員一人ひとりに計画の重要性を説いたため、社員たちはだんだん一つの方向を向いて働くようになりました。そして「ビジョン実現型経営計画」を盛りこんだ人事評価制度である「ビジョン実現型人事評価制度」を実践するうちに、社員から以下のような声が聞こえるようになりました。

「店長が細かいところまで自分の頑張りを見てくれるようになった」
「自分の仕事ぶりが評価されて嬉しい」
「自分の改善点や目標がわかったのでやる気につながる」

また、「経営計画」に具体的な数字が入っていたことから、スタッフが数値を常に意識するようになり、それを踏まえて今何をすべきかという発想をもたらす結果になりました。それまでは経験と勘で現場を動かしていたスタッフが、数字で分析した結果をもとに指導や改善を行うようになってきたのです。

すると次第にこれまで見えなかったことが見えてきたり、指導に説得力を持たせることができたりして、リーダーと部下双方の成長スピードが速まっていきました。気がつけば、会社は最初に定めた「5カ年事業計画」を上回る業績を上げていました。

導入直後から月別売上対前年比越えを連続更新!

A社の売り上げデータを振り返ると、「ビジョン実現型経営計画」を導入した直後から効果が出ているのが見て取れます。6月期で比較すると、2011年から2017年まで、売上高が前年を下回った年は一度もありません。

2017年の売上高は、「ビジョン実現型経営計画」導入前だった2009年と比べて3.1倍という結果になりました。A社は今も、「ビジョン実現型人事評価制度」を運用しながら邁進中。業界ナンバーワンになるという壮大なビジョンに、今や手が届きそうな勢いです。

A社では、社長とリーダーたちが試行錯誤しながら「経営計画」を「アクションプラン」に落とし込み、業務の振り返りによるPDCAを回して仕組みをどんどんブラッシュアップしてきました。この工夫によりスタッフの成長スピードによりいっそう磨きがかかり、結果として業績アップにつながったといえます。

このように、理念をしっかり「経営計画」へ落とし込み、さらに人事評価制度へ落とし込んで運用を進めていくと、人材はみるみる成長していくのです。社員がキラキラ輝きながら、会社も成長を続けていく理想の循環が生まれれば、もう安心といえるでしょう。

おわりに

「数値目標」「戦略」「人材育成計画」、この3つがなければ計画的に会社の成長を実現することはできません。しかし、多くの会社は目標や戦略を立てるのが大事と理解していても、詳細な人材育成計画が必要だとは思っていないのが現状ではないでしょうか。

実は経営の肝となるのが、この人材育成計画であるといっても過言ではありません。人材育成の仕組みをつくるのは、とくにこれから大々的な成長・発展を望む中小企業にとって急務です。「人財」を育てるため、経営計画と結び付けた人材育成計画を、今すぐ練り始めましょう。

この記事を監修した人

代表取締役山元 浩二

経営計画と人事評価制度を連動させた組織成長の仕組みづくりコンサルタント。
10年間を費やし、1,000社以上の経営計画と人事制度を研究。双方を連動させた「ビジョン実現型人事評価制度®」を480社超の運用を通じて開発、オンリーワンのコンサルティングスタイルを確立した。
中小企業の現場を知り尽くしたコンサルティングを展開、 “94.1%”という高い社員納得度を獲得するともにマネジメント層を強化し、多くの支援先の生産性を高め、成長し続ける組織へと導く。その圧倒的な運用実績を頼りに全国の経営者からオファーが殺到している。
自社組織も経営計画にそった成長戦略を描き果敢に挑戦、創業以来19期連続増収を続け、業界の注目を集めている。
著書に「小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』(あさ出版)「小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方」(日本実業出版社)などがある。2020年2月14日に15刷のロングセラーを記録した著書の改訂版である「【改訂新版】3ステップでできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方」(あさ出版)を出版。累計14万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。
1966年、福岡県飯塚市生まれ。

個人ブログ:https://jinjiseido.co.jp/blog/

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