フィードバック面談ではなく育成面談で成長を促す、成長を実現する評価制度「5つの運用プロセス」|人事評価制度・賃金制度のノウハウ | 日本人事コラム

フィードバック面談ではなく育成面談で成長を促す、成長を実現する評価制度「5つの運用プロセス」

フィードバック面談ではなく育成面談で成長を促す

あなたの会社では、フィードバック面談を行っているでしょうか。成長や成果を振り返り、評価をすることはもちろん大切ですが、「フィードバック」よりももっと大事なことがあります。これからの成長を促し、モチベーションを引き出すことです。フィードバック面談に替わる、「育成面談」の方法について解説します。

フィードバック面談とは

フィードバック面談とは、部下が一定期間に得た成果や成長の変化について、上司が直接評価を与える面談を指します。人事考課の結果をただ伝えるだけではなく、なぜそのような評価になったのかをきちんとフィードバックするのです。その上で課題点を指摘し、今後どうすべきかを話し合います。

フィードバック面談は、上司が部下の仕事ぶりをきちんと見ていなければ成り立ちません。よってフィードバック面談を行うと、「上司は自分の仕事をしっかり評価してくれている」という安心感とモチベーションにつながります。評価結果がたとえ厳しいものであっても、本人が受け入れやすくなるというメリットもあります。

また、課題点を洗い出し、上司と一緒に次の成長目標を決めることで、自分が何をやらなければならないかが明確になります。この自覚によって、人材はめきめきと成長していきます。

フィードバック面談ではなく育成面談を行う

世間には、フィードバック面談を「評価結果を伝えるための面談である」と理解している人が少なくありません。しかし、フィードバック面談の本来の目的は、その先にあります。つまり、次の改善目標や課題を明確にし、成長支援を行うことです。さもなければ、人材をより成長させることにはつながらないでしょう。

もしかしたら、「フィードバック」という言葉のイメージが一人歩きして、誤解を生んでしまっているのではないでしょうか。今後は「フィードバック面談」と呼ぶのはやめて、「育成面談」としてみませんか。言葉を一つ変えるだけで、「これは人材育成のための面談なのだ」と全社員に知らせることが可能になります。

「育成面談」でコミュニケーションを深める

「育成面談」の目的は、「成長目標」を明確にすることです。一般的な面談は評価結果を伝えることに重点が置かれがちですが、「育成面談」は「成長支援の場」として次期の課題や目標を明確にすることに主眼を置きます。

また、面談を通じて上司と部下とのコミュニケーションの場が定期的に確実に確保できるのは大きな効果です。このコミュニケーションの充実で、本人のやる気が上がり、成長につながる場合が多いので、しっかり取り組みましょう。

慣れてくると簡単に済ませたり、実施しなかったりという上司が出てきてしまうこともあるでしょう。そんなときは、報告やチェックの工夫で徹底指導していきます。こうして繰り返し「育成面談」を行えば、上司も指導者として成長するという利点もあります。

「育成面談シート」で部下との信頼関係をつくる

上司は「育成面談」を行う前に、必ず「育成面談シート」を作成するのがおすすめです。これをきちんと作成してから面談に臨むことが、部下の納得度と今後の成長に大きく影響してくるためです。

このシートは、実際の育成面談を進める手順に従って構成されています。上司は、あらかじめ育成面談シートを作成し、流れをシミュレーションしておきます。シートを見ながら面談をすることに「部下の信頼をなくすのでは」と心配する方もいらっしゃるかもしれませんが、それは逆です。シートをきちんと作成することで、部下は『自分のために時間をかけて考えてくれている』と上司への信頼を高めます。

私は、クライアントの会社で育成面談のサポート役として同席することがあります。そこでシートの作成をきちんと行ってきた上司と、準備ができなかった上司との差は歴然としています。後者は評価の根拠が曖昧だったり、成長目標を明確に示せなかったりと、指導が不十分なまま面談を終えることが多いのです。当然ながら、部下は納得がいかないまま消化不良となります。

【育成面談シート記載例】

面談対象者に伝え得るべきことについて、下記の項目に従って事前にまとめた上で臨んでください。

1.導入時の話題作り(世間話など)
「寒くなってきたけど、体調は大丈夫?」など、評価とは直接関係のない話をして、まずは場を温めましょう。

2.面談の趣旨の伝達
この育成面談はあくまでも「成長支援の場」であることを、上司も部下も再認識しましょう。

3.四半期を振り返り、全体的によかった点、褒めたい点
話を受け入れる態勢になってもらうため、全体的によかった点、褒めたいところから伝えます。

4.評価項目の中でよかったもののうち、具体的に伝えたい点
3項目ほどに絞って、具体的に伝えましょう。

5.改善してもらいたい点、上司として気になった点
これも3項目ほど。必ず部下の意見を引き出しながら行います。

面談シートの詳細については、下記の記事も参考にしてください。
部下と信頼関係を高める「面談シートテンプレート」の作り方

成長を実現する評価制度「5つの運用プロセス」

面談シートは、しっかりとした評価制度を運用し、そのなかで活用するのがより効果的です。評価制度を運用するときには、次の5つのプロセスが大事になります。

1.評価の実施

上司が、評価基準に基づいて部下ごとに「育成シート」を作成します。「育成シート」とは、評価者(上司)が評価基準に基づき、被評価者(部下)に評価結果をまとめたものです。育成会議の準備として「育成シート」を作成しておきましょう。目標が明確に見える化されていることが、成長の条件となります。

2.育成会議

例えば、直属の上司とその上の上司の評価がバラバラだと、部下は混乱してしまいます。評価者同士のばらつきを調整し、部下育成のための指導ポイントを話し合う場が必要です。これを育成会議とし、人材育成の方向性を決めていきます。

「直属の上司一人だけで評価を行えば、混乱は起こらないのでは」と考える人もいるでしょう。しかし、評価者は2人以上、できれば3人必要です。

評価者2人以上で評価を行ってもらうのには理由があります。まず、異なる立場からより幅広い目線で被評価者を判断することで、公平性を保ちたいためです。また、評価者間の判断の物差しを揃えるためです。

私はこれまで延べ1万人以上の評価結果を見てきました。その結果、上司二者間の評価が一致することは絶対にないと言い切れます。その差を項目ごとに一つひとつすりあわせ、会社の評価として同じ物差しで判断した評価結果へと調整していく作業が、効果的な評価制度の運用のために必要なのです。

3.育成面談

この育成面談で、先ほど紹介した育成面談シートが使われます。評価結果を部下本人に伝え、上司とともに次の目標を明確にする場です。

4.目標設定

「チャレンジシート」を使い、育成面談で決めた目標の達成レベルとプロセスを定めます。「チャレンジシート」とは、部下とともに使う目標設定シートです。目標を3つに絞り、目標の達成レベルとそのプロセスを明確にすることで、キャリアプランを明確にします。

「チャレンジシート」のつくり方は以下の記事をご参照ください。
チャレンジシート(目標設定シート/目標管理シート)の作り方【目標例付き】、たった3項目で社員の成長を加速!

5.「チャレンジ面談」

上司が部下の目標や役割の達成度を毎月チェックし、チャレンジシートへ記入する面談です。さらに、必要な指導を行います。

ここで説明した仕組み・手順はすべて「ビジョン実現型人事評価制度®」の一部です。本気で人材を成長させたいなら、人事評価制度から一続きでの導入・運用をおすすめします。「ビジョン実現型人事評価制度®」の解説は、以下の記事に詳しくまとめてありますので、あわせてお読みいただくとより理解が深まります。

人事評価制度とは「人材を育成するための仕組み」、人事評価制度・経営計画の作り方まとめ

「ビジョン実現型人事評価制度®」のつくり方は、以下の書籍でより詳しく解説しています。

改訂新版 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方

書籍・改訂新版 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方

やる気を低下させた評価結果の面談の事例

ここで参考までに、評価結果の面談がマイナス効果をもたらしてしまった事例を紹介しておきます。せっかくの面談が残念な結果にならないよう、ぜひ失敗事例から学んでください。

人事評価制度導入後の社員の意識を調査するため、クライアントの会社でヒアリングを行っていたときのことです。ある女性社員の番になったとき、彼女は「こんな制度が導入されたおかげで、モチベーションは下がりっぱなしです。早く元に戻してほしいです」と涙ながらに訴えてきました。

理由をたずねたところ、彼女の今回の評価結果は「C」だったとのことです。「別に評価結果に不満があるわけではありません。でも、全くその理由を教えてくれないなんて、ひどすぎませんか」と言う彼女の言葉に、私は驚きました。評価結果の判断理由を聞かされていないなんて、しっかりと面談が行われていれば、あり得ないことです。

次に彼女は、グループ長からまともな育成面談を受けたことがないことを明かしました。「今回が4回目の評価ですが、毎回、電話で評価結果を伝えられただけなんです。前回までの3回は『A』や『B』評価だったし、グループ長も忙しいのだろうと思って何も言わなかったのですが、『C』評価だった今回はさすがに悔しくて……」

早速グループ長にヒアリングを行いました。なぜ電話で結果を伝えるにとどめたのかとたずねたところ、かえってきたのは「だって、評価結果を伝えるのが面談でしょう。電話でも私はきちんと伝えていましたから、何も問題はないでしょう」という言葉でした。

育成面談の目的は2つあります。1つは評価結果を伝えること、もう一つは課題の明確化と目標の共有です。本人の成長に結びつけるのが目的である評価制度の趣旨からすれば、当然、後者の方が重要です。一方、評価結果に対して本人の納得がなければモチベーションは高まりませんから、評価結果もきちんと伝える必要があります。

私は、評価者に対する意識付けのフォローを怠ったことを反省しました。この事件依頼、必ず私は育成面談についての研修を実施して、育成面談の目的や役割を伝え、その重要性を評価者に徹底するようにしています。

毎月コツコツ面談がきっかけで社員が次々と成長した事例

ここで、面談の成功例も取り上げておきましょう。一見地道な「毎月、コツコツ面談する」という取り組みが功をなし、社員も会社も成長した事例です。

目立たなかった事務社員がいち早く昇格を果たす

Aさんは真面目な仕事ぶりが評価される事務社員。社長は正直、Aさんが会社に大きな貢献をしてくれるとまでは期待しておらず、「日常作業を安心して任せられる社員」という印象しか持っていませんでした。

しかし、マネージャーが毎月育成面談を行う「毎月コツコツ面談」を実施するようになると、どちらかというと消極的だったAさんの評価は最初こそ「D」でしたが、そこからから「B」になり、「A」になり、ついには昇格まで果たしてしまいました。

Aさんは語ります。「面談が導入されるまでは、決められた仕事をミスなくこなすことだけが自分に求められていると本気で思っていました。しかし毎月の面談が始まって成長を求められるようになると、それが嬉しくてたまりませんでした」。そして求めに応じようと、目標に邁進するようになったのです。

社員全員にスポットを当てたことが思いも寄らぬ嬉しい結果を招いた

これまで目立たなかったAさんが成長していくのを見て、他の社員も積極的に仕事へ取り組み始めました。こうして社員は切磋琢磨しながら成長を遂げ、今では自ら課題を発見し、高い目標にチャレンジしてくれるようになりました。業績も大きく向上したことは、言うまでもありません。

これまで当たり前だった成果主義的な人事制度は、成績優秀な人にだけスポットを当てて組織を活性化していこうという仕組みでした。しかし、最初から結果を出せるような優秀な人材の確保が難しい中小企業では、成果主義的な考え方では人材そのものがいなくなってしまうかもしれません。

あえて社員全員に丁寧な面談を行い、目標を与え、成長を促すことで、「成長したい」という意思がある人全員を引き上げていくことができます。Aさんのように、潜在的に成長意欲が高い人を見つけ出すことも可能になるのです。

優秀な人だけを伸ばそうとする育成方法と、社員全員をサポートしていく育成方法。中小企業にとってどちらが必要かは、言わなくてもお分かりいただけるでしょう。

育成面談の失敗パターンの例

育成面談の失敗には、ある程度のパターンがあります。以下に紹介する失敗パターンをしっかり頭に入れておけば、充実した育成面談を実施することができるでしょう。

1. 面談の主旨を伝えていない

私たちは、育成面談時にその主旨を明確に伝えることを徹底して指導しています。育成、つまり成長を支援する場であるということです。これを毎回、育成面談のたびに繰り返し繰り返し、しつこく被評価者に伝えてもらいます。

こうしないと、評価制度本来の目的を履き違えてしまう危険性があるからです。
面談を受ける社員側は、どうしても評価の面談=「年俸交渉の場」と思ってしまうものなのです。上司の側からその意識を正してあげる必要があります。

2. 育成面談シートを作成していない

育成面談シートは、被評価者に伝えるべきことを伝え、最大限のやる気を持ってもらい、次の目標に取り組んでもらうために必要な内容と手順を盛り込んだものです。ぜひ活用してください。

クライアントの会社で面談に同席させていただく場合も、育成面談シートを作成してこない人がたまにいます。そのような人の面談は、横で見ていてひどいものです。面談シートがなければ、後述の3,4,5全てに当てはまってしまいます。

そして面談を受ける側は『この人は本当に自分のことを考えてくれているのだろうか』と感じてしまいます。必ず育成面談シートを作成しましょう。

3. 判断理由が伝えられていない

なぜその評価結果になったのか、明確に伝えられない評価者がいます。「この項目の判断理由はなんだったかな……えっと……」というような状況では、とても部下の信頼は得られません。

本人に評価結果を納得してもらうためには、客観的な事実に基づいた判断理由を伝える必要があります。育成面談シートに、しっかり書き記しておくことが重要です。

4. コミュニケーションが取れていない

被評価者が全くしゃべらないまま終わってしまう面談がたまにあります。というよりも、「評価者が被評価者にしゃべらせずに終わらせてしまう」といったほうがいいでしょう。

これでは、被評価者は自分の言いたいこともいえずに、消化不良のまま面談が終わってしまいます。しっかり発言を促しましょう。面談のはじめに場を温めるなど、話しやすい雰囲気作りも大事です。

5. 目標や課題を共有できていない

次の目標が明確にならないまま面談を終えてしまう人もいます。育成面談の目的の1つが、課題の明確化と目標の共有です。評価を伝えることで終わってしまっては、本来の目的である人材育成には決してつながりません。

育成面談では、前述したチャレンジシートを埋められるよう、具体的で期限つきの目標を決めて共有するところまで行いましょう。そこまでして初めて、「あなたが今後もっと輝くための育成面談なのだ」という会社の想いが社員に伝わります。

おわりに

以上のように、フィードバック面談は、育成面談と名前を変えた方が、本来の役割をより社員に浸透させることができます。あくまで「社員の豊かな成長を支援するための面談」として、上司も部下も面談に臨みましょう。

育成面談を繰り返していくことで、部下が成長するのはもちろんのこと、上司の指導力も高まります。社員もリーダーも同時に成長できる仕組みを、ぜひ社員育成の場に取り入れてください。

この記事を監修した人

代表取締役山元 浩二

経営計画と人事評価制度を連動させた組織成長の仕組みづくりコンサルタント。
10年間を費やし、1,000社以上の経営計画と人事制度を研究。双方を連動させた「ビジョン実現型人事評価制度®」を480社超の運用を通じて開発、オンリーワンのコンサルティングスタイルを確立した。
中小企業の現場を知り尽くしたコンサルティングを展開、 “94.1%”という高い社員納得度を獲得するともにマネジメント層を強化し、多くの支援先の生産性を高め、成長し続ける組織へと導く。その圧倒的な運用実績を頼りに全国の経営者からオファーが殺到している。
自社組織も経営計画にそった成長戦略を描き果敢に挑戦、創業以来19期連続増収を続け、業界の注目を集めている。
著書に「小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』(あさ出版)「小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方」(日本実業出版社)などがある。2020年2月14日に15刷のロングセラーを記録した著書の改訂版である「【改訂新版】3ステップでできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方」(あさ出版)を出版。累計14万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。
1966年、福岡県飯塚市生まれ。

個人ブログ:https://jinjiseido.co.jp/blog/

人事評価制度策定に役立つ各種テンプレート無料プレゼント

以下のフォームにご入力いただくと、ダウンロード用URLを記載したメールをお送りします。また、会社のビジョンを実現するための具体的実践例と成功のコツが満載の「山元浩二のメールマガジン」を月2回お届けします!

*
*
メールアドレス*
会社名*
役職*
業種

関連記事

カテゴリー


セミナーの詳細はこちらから

ビジョン経営実践塾
詳細はこちらから

日本人事経営研究室の書籍

人気の記事

最新記事