中小企業の基本給の決め方、本給と仕事給の比率が重要!

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本記事では、中小企業の基本給の決め方を詳しく解説します。

中小企業が基本給を決めるとき、「この人は、前の会社でこの金額だったから、同じくらいにしよう」「若いから、最初は基本給が安くてもよいだろう」などと、基準を決めずに給与を決定しがちです。しかし、全スタッフに納得してもらう給与にするためには、きちんと基準を決める必要があります。基本給を決めるときには、本給と仕事給の比率を重視しましょう。「なんとなく」で加給や減給をせず、基本給の仕組みを整えたうえで決めることをおすすめします。

基本給とは

基本給とは、本給と仕事給を合わせたものです。固定給の中に基本給があり、基本給の中に本給と仕事給が含まれます。

厚生労働省では、基本給を「毎月の賃金の中で最も根本的な部分を占め、年齢、学歴、勤続年数、経験、能力、資格、地位、職務、業績など労働者本人の属性又は労働者の従事する職務に伴う要素によって算定される賃金」と定義しています。また、「原則として同じ賃金体系が適用される労働者に全員支給されるもの」としています。

つまり、住宅手当や通勤手当、残業代などは基本給には入らないというわけです。これらは、労働者の属性や職務の要素によって支給される手当ではないからです。

参考:平成21年就労条件総合調査結果の概況:主な用語の定義

なお、『人事労務用語辞典』では、賃金の基本的部分を「基本給」と定めています。他の「付加的部分」、つまり諸手当は基本給ではないとされ、「平均的には基本部分が9割程度」と書かれています。

また、基本給の内容としては「本人給(あるいは属人給ともいい、年齢給・勤続給からなる場合が多い)と職務給・職能給・仕事給などから成り立っている場合が多い」としています。このように、募集の際には「基本給〇万円」とだけ書かれている場合が多くても、実際には内訳があるのです。

本給・仕事給とは

本稿では、基本給を「本給と仕事給を合わせたもの」とします。本給とは、年1回定期的に昇給する積み上げ型の支給項目で、普段は金額が動きません。

一方で仕事給とは、評価があるたび、あるいは一定期間の評価結果に応じて金額が変動する支給項目です。成果や貢献度が、直接反映されます。

基本給の決め方

基本給を決めるときは、「本給」と「仕事給」を分けて考えることが大事です。まずは一般社員、係長、課長といったグレードごとに本給の上限、下限を設け、本給の標準昇給額テーブルを作成します。基本的には、本給は経験年数を追うごとに上がっていきます。降格した場合のみ、下がる可能性があります。

仕事給は、前回の評価と比較して、評価結果が上がれば金額が上がり、評価が下がれば金額も下がることになります。変動の幅は、一般社員など役職に就いていない社員は小さく、上位グレードに行くほど大きく差がつくよう設定しましょう。

本給と仕事給の比率を決める


勤続給的な性格の「本給」と、評価結果に基づいた仕事の貢献度で決まる「仕事給」のウェイトを決めれば、どちらに重点を置いた賃金体系なのかを示すことができます。以下、3つのパターンで考えてみましょう。

【A】本給:仕事給 7:3
【B】本給:仕事給 5:5
【C】本給:仕事給 3:7

Aでは勤続給的な意味合いを重視し、会社としては評価をダイレクトに反映するウェイトは比較的小さくしたいことが社員に伝わります。

Bでは、基本給の半分は仕事の貢献度がダイレクトに反映される考え方であるというメッセージを、社員に伝えることができます。

Cでは、仕事の貢献度が基本給に大きく影響することが、社員に伝わります。

ポイントは、仕事給の比率を大きくすると、基本給が大きく変動するかもしれないというイメージを持つ人が多くなることです。とくに社員は給与が下がるほうに敏感ですから、仕事給の比率を大きくしすぎると、給与を下げるための賃金制度ではないかという誤解を持たれてしまう場合があります。

いったんこうした認識が浸透してしまうと、修正するのに大きな労力と時間を要します。会社の組織風土やこれまでの賃金の運用方法を踏まえて、比率は慎重に決める必要があります。

「仕事給」の金額を決める

「仕事給」と「本給」の比率を決めたところで、いよいよ、具体的な給与の金額を検討していきます。まずは、「仕事給」の金額から決定しましょう。

グレードごとに設けた給与の標準金額テーブルを確認し、「本給」「仕事給」の比率をかけて、各グレードの「本給」「仕事給」の標準額を割り出します。この標準額をもとに、「仕事給」を決めていきます。

「仕事給」は、評価結果をダイレクトに反映する支給項目です。評価結果に応じて、上がる場合と下がる場合があります。そこで、この「仕事給」の性格を利用して、評価結果を反映する段階(差額)を設定しながら、その範囲を決めていきます。

評価ランクが一つ変わると、いくら金額が変わるかをグレードごとにシミュレーションしながら、「仕事給」の幅を設定するのがよいでしょう。評価ランクは「SS、S、A、B、C、D、E」という7段階とするのが一般的です。

前述したように、一般的には上位職になればなるほど、差額を大きく設定します。つまり、上位職になるほど評価結果で差がつく賃金体系にするということです。上位職の人ほど会社に対する貢献度が大きく、責任の範囲も広いためです。例えば、次のようにします。

S1グレード 1,000円
S2グレード 2,000円
S3グレード 3,000円
L1グレード(主任) 5,000円
M1グレード(課長) 7,500円
M2グレード(部長) 10,000円

次に、グレード別「仕事給」の標準額を、各グレードの「B評価」の金額として中心に置き、上に「SS、S、A評価」の3ランク、下に「C、D、E評価」の3ランクの金額を決めていけば、計7ランクの仕事給額を設定できます。

あらかじめ計算式を入力した表をエクセルで作成しておいて、評価ランクの差額を設定しておきましょう。賃金表作成に便利です。

仕事給の金額をもとに本給を決める

決定した「仕事給」の金額をもとに「本給」の金額を決めていきましょう。「仕事給」は7ランクに分けましたが、「本給」は、各グレードの上限と下限の金額のみを決めます。これは、本給には幅を持たせて、現行の給与のばらつきを吸収し、新制度への移行を行いやすくするためです。新しい給与体系のもとで、給料が大幅に増減したら、社員の間に戸惑いや不安が生まれてしまうでしょう。そうならないために、金額幅にゆとりを持たせておくのです。

「仕事給」と「本給」の比率に合わせて、「本給」の上限額、下限額を決めます。例えば、「本給:仕事給=5:5」であれば、「本給」の上限・下限と、「仕事給」の上限・下限の金額は同じとしましょう。「本給:仕事給=6:4」であれば、「仕事給」の上限(下限)額:「本給」の上限(下限)額が6対4になるようにします。

この「本給」と「仕事給」を合計したものが、各グレードの「基本給」となります。昇給は、各グレードの昇給額テーブルに沿って行います。このように、給与基準は厳格なセオリーに沿ったものでなければなりません。

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給与の決め方

以上のような本給と仕事給の考え方を伝えると、それまでの賃金制度は「社長が独断で決めていた」「一度決めた給与をずっと変えていなかった」と言う会社が少なくありません。しかし、給与の基準があいまいなままでは、社員の不満が生まれてしまいます。

しっかりした給与体系を作って社員を安心させるために、まずは社員全員のグレードをはっきりさせましょう。また、「名ばかり役職」を整理して意味のない役職手当を与えることはやめましょう。

さらに、「マネジメントライン」とは別に、「専門職ライン」を設けることも大事です。スキルが優れていてもリーダー向きではない社員は、一定数いるためです。役職者とならなくても長く勤務するモチベーションを保てるような工夫を、人事評価制度で作っていきましょう。給与の決め方についての詳細は、以下の記事をご覧ください。

あなたの会社は大丈夫?間違った給与の決め方から整合性のある給与制度へ移行する方法

役職手当の決め方

給与には、役職手当も含まれています。役職手当についても、社長が独断で決めることは避けましょう。グレードごとに金額を割り振り、責任のウェイトに見合った金額になっているかをチェックしていきます。

管理職と非管理職の役職手当の金額差には、とくに気をつけましょう。詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

役職手当の決め方と設定方法、社員を育てる賃金制度の仕組み

「本給」と「仕事給」の運用方法

ここまでで、新しい給与体系に基づいた月給の総支給額が決まりました。ここからは、新しい給与をどのように運用していくか「本給」と「仕事給」に分けて解説します。

「本給」の運用方法

「本給」は、1年に1回昇給します。昇格、降格した場合はグレードが変わるため、「本給」も変わる可能性があります。昇格した場合、本給額が上位グレードの下限に満たなければ金額がアップしますし、降格時に下位グレードの上限より本給が高ければ、金額が下がることになります。

また、本給には、各グレードで「上限」があり、この金額を超えて昇給することはありません。そのため、移行時点でもともと本給額が上限に近い人や同じグレードで在籍年数が長い人は、本給がすぐに上限金額に到達する場合があります。

こうなると、その後は本給の昇給はストップします。ただし、その後、昇格してグレードが上がった場合は、新たなグレードで毎年昇給することになります。

給与の改定については、「春闘」としてメディアなどで紹介されるため、4月に改訂されるというイメージが強いかもしれません。実際、中小企業でも給与改定を4月や5月に実施している会社が多いようです。

しかし、1年間の仕事ぶりや貢献度を昇給に反映させるためには、会社の決算期に合わせた給与改定がベストです。次年度の人件費を検討したり、その結果を適正に反映したりするならなおさらでしょう。

例えば、9月決算の場合、給与改定のスケジュールは以下のようになります。

  • 本給昇給の評価対象期間は前年度10月から9月までとする
  • 10月に評価を実施
  • 評価結果に基づき、11月支給分の給与から昇給分を反映させる

社員数が多く、評価そのものや集計に時間が必要な場合は、12月からの反映となることもあるでしょう。

「仕事給」の運用方法

「仕事給」は半年ごとに改定するのが一般的ですが、毎月、3ヶ月毎といった改定の運用も可能です。ただし、毎月改定する場合は、評価も毎月行わなければならないことになります。決算月の翌月や、半期終了月の翌月など、業績評価の節目となるタイミングで評価と昇給を行ったほうが、会社の実情に合わせた運用ができるでしょう。

「仕事給」は、評価結果に連動してダイレクトに変動します。ひとまずは全社員を「B」ランクの金額に設定していた場合、「A評価」であればAの金額に、「C評価」ならCの金額に動き、評価ごとに上下する可能性のある支給項目となります。

「仕事給」は支給額がダウンする可能性もあるため、年一回だけの改定にすると、評価が下がってしまった人のモチベーションに悪影響を与え続ける恐れがあります。「頑張れば、そのうち挽回できる」と思わせるためには、長くとも半年程度の改定が適しているといえるでしょう。

例えばあなたが「D評価」となってしまい、その結果、給与が2万円下がったと考えてみてください。1年間下がったままの場合と、半年後には改定される場合とでは、どちらがやる気になるでしょうか。

もし、年1回の改定であれば、年収にして2万4,000円も収入が減ってしまいます。こうなると、モチベーションが下がる人や、評価対象期間の後半のみ頑張ろうと考える人が出てきてしまうでしょう。そこで、「仕事給」は変更の期間を半年とし、一度下がっても半年後には挽回できる仕組みにする場合が多いのです。

なお、給与を改定すると、どうしても「今までの給与と比べると、この人の給与がかなり低くなってしまう」というケースが出てきます。そんなときに発生するのが「調整給」です。

調整給は、できれば一時的な支給にとどめたい手当です。どのように運用するのが望ましいか、別記事に詳しく紹介してあります。合わせてごらんください。

調整給(調整手当)が発生するケースとは?必要性の見極めと運用方法を解説

基本給の運用は、以下の書籍でより詳しく解説しています。
小さな会社の〈人を育てる〉賃金制度のつくり方 「やる気のある社員」が辞めない給与・賞与の決め方・変え方

小さな会社の〈人を育てる〉賃金制度のつくり方

おわりに

「社長、自分はどうしてこの給与なのですか?」「Aさんと同じ仕事内容なのに、給与が違うのは納得がいきません」。社員からそんな言葉を投げかけられたときに、きちんと説明できるような給与制度を敷いていなければ、社員は不信感を募らせてしまいます。

大事な人材を失う前に、アバウトな給与制度を今すぐ見直しましょう!
と言いたいところですが、本当に社員に納得してもらえる賃金制度をつくるには、「経営計画」と「評価制度」の仕組みを構築し、運用する必要があります。

その理由については以下の記事を参考にしてください。
伸びる会社は社員の処遇(報酬)のメリハリをつけている!業績を伸ばす賃金制度の作り方

給与制度が整い、全社員に見える形で公表すれば、社員のモチベーションはぐんとアップします。どれだけ頑張れば、給与がどれほど上がるのかがわかるためです。社員一人ひとりに夢があり、成長意欲があり、自分や家族を支えていくための給与目標額があります。それをイメージしながら、会社と社員の成長を叶える賃金制度を作りましょう。

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この記事を監修した人

代表取締役山元 浩二

経営計画と人事評価制度を連動させた組織成長の仕組みづくりコンサルタント。
10年間を費やし、1,000社以上の経営計画と人事制度を研究。双方を連動させた「ビジョン実現型人事評価制度®」を480社超の運用を通じて開発、オンリーワンのコンサルティングスタイルを確立した。
中小企業の現場を知り尽くしたコンサルティングを展開、 “94.1%”という高い社員納得度を獲得するともにマネジメント層を強化し、多くの支援先の生産性を高め、成長し続ける組織へと導く。その圧倒的な運用実績を頼りに全国の経営者からオファーが殺到している。
自社組織も経営計画にそった成長戦略を描き果敢に挑戦、創業以来19期連続増収を続け、業界の注目を集めている。
著書に『小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』(あさ出版)、『小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方』(日本実業出版社)などがある。2020年2月14日に15刷のロングセラーを記録した著書の改訂版である『【改訂新版】3ステップでできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』(あさ出版)を出版。累計14万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。
1966年、福岡県飯塚市生まれ。

個人ブログ:https://jinjiseido.co.jp/blog/

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私たち日本人事経営研究室は、"人間成長支援"をミッションとし、
中小企業の持続的成長をサポートしています。
「人材」ではなく「人間」としているのには、こだわりがあります。
それは、会社の中で仕事ができる「人材」ではなく、仕事を通じて地域や環境、社会に貢献できる「人間」を育てる事を目指しているからです。
日本人事経営研究室では、そのために必要な「人」に関するサービスや情報を提供しています。

日本人事経営研究室 代表取締役 山元浩二氏

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