相対評価と絶対評価の意味や役割の違いを解説、人事評価に必要な4つの評価項目

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あなたの会社の人事評価制度は、「相対評価」と「絶対評価」、どちらを採用しているでしょうか。どちらも間違いではなく、それぞれ役割があり、メリットとデメリットがあります。

絶対評価と相対評価の違いを解説したうえで、人事評価に必要な4つの評価項目についてご案内します。

相対評価、絶対評価の定義

学校の成績に限らず、評価が行われるところでは、どこであっても絶対評価と相対評価のいずれか、あるいは両方の評価方法が行われています。

会社の人事評価も同様です。絶対評価を行うところでは、設定目標の達成度によって評価が決まり、相対評価を行うところでは、他社員との比較によって評価が決まります。

相対評価とは

相対評価とは、同じ集団内のどの位置にいるかによって、評価を行うことです。学校の成績なら、順位に従って評価を行うような場合が、相対評価といえます。例えば「1位から5位までは5」などというように決めます。

絶対評価とは

絶対評価とは、他の人と比べることなく、定められた基準に基づいて評価を行うことです。学校の成績なら、あらかじめ決められている評価基準に従って点数を求め、点数区分ごとに1から5の評価を行うような場合が、絶対評価といえます。例えば、「100点を満点として、80点以上なら5」などというように決めます。

  • 相対評価=集団の相対的な位置・成績に応じて評価する
  • 絶対評価=決まった評価基準に沿って評価する

相対評価と絶対評価の違い

相対評価と絶対評価の違いは、以下の3つです。

各評価に割り当てられる人数の違い

絶対評価では、すでにある基準に沿って評価を決めるため、学校の成績であれば「全員が評価5」ということもあり得ます。

対して相対評価では、順位によって評価をふりわけるため、各評価に割り当てられる人数が決まっています。そのため、「全員が評価5」という状態は起こりえません。

比べる対象の違い

とくに企業の人事考課の場合、絶対評価では、その人に期待される成果と比べて現状はどうかを評価するため、比べる対象は「理想の状態の自分」です。一方、相対評価では順位が基準なので、比べる対象は「他の社員」となります。

このように、絶対評価と相対評価とでは比較対象が異なるのです。

評価に波があるかないかの違い

クラスでも、会社でも、「成績の良い人」と「悪い人」は必ずいて、優秀者として表彰される人はある程度決まっています。よって相対評価の場合、特定の集団内に入ってしまえば評価はある程度固定されるといえるでしょう。

一方で絶対評価の場合は、各人の頑張りによって評価が上がったり下がったり、波が激しいのが特徴です。

相対評価メリット・デメリット

相対評価にも、絶対評価にも、メリットとデメリットがあります。それぞれご紹介しましょう。

相対評価のメリット

相対評価のメリットは、社員同士の競争意識が高まるところです。とくに成績の優劣をつけがたい社員がいる場合には、互いに切磋琢磨し合い、オフィスにいい刺激と緊張感を与えることになるでしょう。

また、順位によって評価が決まるため、用意する原資の範囲内で給与やボーナスを分配することが容易です。

相対評価のデメリット

相対評価のデメリットは、評価の透明性が保たれないところです。営業部門であれば成果が数字で見えるため、評価の基準がわかりやすいかもしれません。しかし、その他の部門の場合は、何をもって「AさんのほうがBさんよりも優秀」と決めるのか、判断が難しいところです。

上司からすれば手元にある情報で判断せざるを得ないですが、その根拠は社員の納得のいくものとはいいがたいでしょう。相対評価は、どう頑張ったら評価が上がるのかが見えにくいため、低評価となった社員のモチベーションを著しく低下させる恐れがあります。

絶対評価のメリット・デメリット

絶対評価のメリット

絶対評価のメリットは、評価基準に透明性があることです。フェアであること、どのように頑張ればよいかが社員に伝わり、集団全体のモチベーションがアップします。

さらに、評価が下されたあと、「次はどのように頑張ったらよいか」を各社員が考えることができるのも、絶対評価のよいところ。目指すべきは「理想の自分」なので、自らの理想の状態に近づくほど評価が上がるという状態は、社員にとっても嬉しいものです。

絶対評価のデメリット

絶対評価のデメリットは、評価者の判断力によって評価が左右されてしまうところです。どうしても、「甘めの上司」と「厳しめの上司」がいます。甘めの上司が査定に関わると全員の評価が上がり、厳しめの上司が査定すると下がる恐れがあります。

また、全員の評価が上がってしまうと、給与やボーナスの支払いが難しくなることもあるでしょう。原資コントロールをいかに行うかが、絶対評価を行うときの課題です。

この課題の解決方法として、経営計画と連動した人事評価制度の運用をおすすめします。弊社ではこの運用方法を、「ビジョン実現型人事評価制度®」と呼んでいます。

会社のビジョン・理念・事業計画・戦略を盛り込んだ経営計画と人事制度を連動させ、どのような人材に育ってほしいのかを人材目標として掲げることで、社員が成長していきます。すると、会社の業績アップにつながり、原資が足りなくなる心配を解消できるでしょう。

「ビジョン実現型人事評価制度®」の作り方は以下の記事にまとめてありますので、ぜひこちらもご一読ください。

ビジョン実現型人事評価制度®・経営計画書の作り方総まとめ

人事評価に必要な4つの評価項目

絶対評価と相対評価のメリットやデメリットを挙げましたが、最近では社員全体のモチベーションを上げるためにも絶対評価がなされるべきという声が上がっています。でも、絶対評価を実践したいと考えていても、どのような項目を設定すればよいかわからないという経営者やリーダーはたくさんいることでしょう。

人事評価に必要なのが、以下の4つの評価項目です。

  • 業績項目
  • 成果項目
  • 能力項目
  • 情意項目

「業務項目」は数値での評価項目、「成果項目」は数値以外の重要な役割に関する項目、「能力項目」は実績を残すための必要な能力に関する項目、「情意項目」は仕事に対する姿勢に関する項目を指します。

絶対評価を実践する際、この4つの評価項目づくりは欠かせません。社員全員を多方面からとらえ、総合的に評価するのが、公正な評価のポイントだからです。それぞれ、どのような評価項目かは以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

評価基準(評価項目)の決め方、行動に結びつける人事評価の4つの項目

絶対評価のデメリットを解消する「トライアル評価」

上述したような、絶対評価のデメリットの解決策として、「トライアル評価」の実施をおすすめします。「トライアル評価」は、人事評価制度を運用する前の予行演習です。

「トライアル評価」では、評価者である上司(リーダー)が部下を納得させられる評価をし、部下の成長支援が行えるようにする練習します。制度のダメ出しと不満を洗い出し、評価される側が納得のいく評価制度へ昇華させていくのです。

具体的には、「トライアル評価」には以下の3つの目的があります。

  • 1:評価者に評価に慣れてもらう(評価のスキルアップ)
  • 2:評価基準の内容と評価結果が妥当かどうかの検証
  • 3:賃金に反映した結果が妥当かどうかの検証

この「トライアル評価」は、最低でも3回は実施してください。1回だけ実施してすぐに本番の制度に反映するのではなく、3 回のトライアルを通して、じっくり分析・対策・改善を行いましょう。

事前に「トライアル評価」を実施して評価者を教育することで、絶対評価のデメリットである「評価のバラツキ」を解消できるでしょう。

トライアル評価を必ず3回実施する

トライアル評価の1回目は、評価と育成会議までを行います。まずは評価者の評価手順の理解、評価基準の改善を目的としましょう。

2回目は、一通り運用してみます。評価者の評価スキルの確認と指導、評価基準の改善を目的としましょう。

3回目は、評価を実施した後に、社員たちが評価に納得したかどうかアンケートを取りましょう。評価結果の妥当性を確認し、評価者の部下指導レベルも確認します。

こうして、トライアル評価で制度のダメ出しと不満を解消しておきます。すると、賃金に結び付けたときの不満や不具合を、最小限に抑えることができます。

トライアル評価をじっくり行えば、逆に成果が早まる

トライアル評価を3回実施するというと、「本格的な運用まで、そんなに待っていられない」と感じる経営者もいることでしょう。しかし、このトライアル評価のプロセスを時間をかけてじっくり行うことが、逆結果的に成果を早めることにつながります。

なぜなら、新しい制度に社員が心から納得していない段階で運用を開始すれば、全体のモチベーションが下がってしまうためです。新しい制度の目的や役割を全社員にきちんと浸透させて、トライアル評価のプロセスを踏んで定着を図りながら、じっくり時間をかけて導入、実践していきましょう。

当社が支援するクライアントでは「評価結果に納得した」と答えてくれた被評価者が、94%を超えています。評価への納得度を得ることに時間をかければ、結果的に成果を早め、確実なものになるのです。

「納得度アンケート 」で定期的に納得度を計測

より成果を出すためには、3回目のトライアルで実施するような「納得度アンケート」で、定期的に納得度を計測するのが大事です。新しい評価制度導入後の、社員の納得度を計測します。

評価の納得度が得られているかどうか、そのための目標が明確になって取り組めているかどうか、アンケートを実施し、課題がある場合は改善しなければなりません。

アンケートは育成面談の終了後に、全社員に実施します。無記名で提出してもらえば、本音で回答してもらえる確率が高まるでしょう。

また、必ず半年に一回は実施し、継続して運用することが大事です。

アンケートで組織上の問題点が浮き彫りに

納得度アンケートは部署ごとに結果を集約することで、リーダーの評価への関わり方や部署のマネジメントの問題点などが明確になる場合があります。一例を挙げましょう。

全国に22店舗を展開する企業で納得度アンケートを実施しました。すると、そのうち2店舗の結果が極端に悪かったのです。「育成面談を受けることで、仕事に対するモチベーションが上がったか」という項目に対し、5割以上が「モチベーションが低下した」と答えていました。

ほかの20店舗は8割近くが、「モチベーションが上がった」という回答でした。不審に思った社長は、店長本人にはわからないように配慮しながらその原因を探ってみました。すると、この2店舗は育成面談を行っていないことがわかったのです。

また、ほかのクライアントでは、部署のリーダーが日ごろのマネジメントが全たくできていなかったということがわかりました。リーダーへの意識づけと指導を行ったにもかかわらず、改善されずに降格せざるをえませんでした。

納得度アンケートの本来の目的は、納得度の計測と向上へ向けた対策です。しかし、上記の事例のように人事評価制度や組織上の問題点が把握できるという効果もあります。組織力の向上のためにも実施したい仕組みです。

評価の期間は四半期がベスト

一般的に、評価は6ヶ月ごとに行うことが多いと思います。しかし、「ビジョン実現型人事評価制度®」では3ヶ月ごとの評価を推奨しています。

理由は2つあります。「適正な評価とするため」と、「成長スピードを速めるため」の2つです。

適正な評価とするため

6カ月ごとに評価を行う場合、仮に4月に評価を実施すると、その対象期間は前年度10月から当年3月が対象となります。あなたは5、6カ月前、10月や11月の部下の仕事ぶりをはっきり覚えていますか?

そう、6カ月間を振り返り、総合的な判断を適正にできる人はほとんどいないのです。適正な評価を行うための根拠となる事実が直近の出来事だけになってしまったり、日立つ成果や失敗のみで判断してしまったり、本人が納得できない評価となってしまう場合が多いのです。

成長スピードを速めるため

ここがいちばん大事な視点ですが、「評価=人材育成の機会」ですから、できるだけ多く設けたほうが成長スピードも速まるという考え方です。

実際、当社のクライアントでも社員数が多いなどの理由で6カ月ごとに評価を行っている会社があります。しかし、3カ月ごとに評価を行っている会社と比較すると、圧倒的に後者の社員、とくに評価者であるリーダーの成長スピードが速いのです。そのスピードの差は倍どころではなく、3〜10倍違います。

部下の仕事ぶりをしっかり観察し、事実に基づいて適正な評価を行い、本人の成長に効果的な目標を設定し、達成状況を確認、サポートしていく。これをリーダーが3カ月ごとにまわすのと6カ月ごとにまわすのではどちらが成長スピードが速いかを考えていただくと、その理由は明らかでしょう。

結果として業績や会社の成長にも影響します。ぜひ四半期評価を実施してみてください。

おわりに

経営者にとっては、社員たちに競わせて「トップには報酬を与える」という仕組みにしたほうが簡単と思えるでしょう。しかし、そのような相対評価が通用するのは一部の部署だけです。業績に直結する部署以外の社員を活き活き働かせたい、モチベーションを上げてもらいたいと考えたなら、透明性のある評価基準をつくり、社員全員に公表しましょう。

絶対評価は、社員同士の競争を作り出すのではなく、「今の社員」を「理想の社員」へと引き上げていく取り組みです。競争よりもずっと緊張感のある戦いを、社員全員に求めることになります。しかしそれは、会社にとっても、社員自らにとってもプラスになる戦いとなるでしょう。

絶対評価と相対評価にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、それを理解した上で適切な評価制度の運用をしていきましょう。

この記事を監修した人

代表取締役山元 浩二

経営計画と人事評価制度を連動させた組織成長の仕組みづくりコンサルタント。
10年間を費やし、1,000社以上の経営計画と人事制度を研究。双方を連動させた「ビジョン実現型人事評価制度®」を480社超の運用を通じて開発、オンリーワンのコンサルティングスタイルを確立した。
中小企業の現場を知り尽くしたコンサルティングを展開、 “94.1%”という高い社員納得度を獲得するともにマネジメント層を強化し、多くの支援先の生産性を高め、成長し続ける組織へと導く。その圧倒的な運用実績を頼りに全国の経営者からオファーが殺到している。
自社組織も経営計画にそった成長戦略を描き果敢に挑戦、創業以来19期連続増収を続け、業界の注目を集めている。
著書に『小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』(あさ出版)、『小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方』(日本実業出版社)などがある。2020年2月14日に15刷のロングセラーを記録した著書の改訂版である『【改訂新版】3ステップでできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』(あさ出版)を出版。累計14万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。
1966年、福岡県飯塚市生まれ。

個人ブログ:https://jinjiseido.co.jp/blog/

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日本人事経営研究室 代表取締役 山元浩二氏

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