ミニ講座vol.040

目的と手段1

最近、当社とお付合いいただく会社に特徴が出てきました。それは、
「過去、人事評価制度を設計し、導入を試みたが導入できなかった」
「人事評価制度を導入しているが、運用がうまくいかない」
こんな企業様とのお取引が増えています。
 
当社が人事評価制度の運用部分に関してもお手伝いしており、過去成果に結びつけてきた実績を信頼していただいてのことだと考えております。
 
このように一度人事評価制度の設計、あるいは導入に失敗した企業では、その原因がはっきりしており、しかも共通しています。
 
そこで、今回はこれから人事評価制度づくりに取り組もうという方が失敗しないためにどのような問題が予測され、どんな点に気をつけなければならないのか、ということにテーマを絞ってお話ししたいと思います。
 
人事評価制度導入の失敗の原因は大きくは次の2点です。
 
(1)目的と手段のはき違え
(2)制度上の運用がうまくいかない
 
今日はこの中から『目的と手段のはき違え』についてお話します。
 
「人事評価制度の設計・導入」も企業内の改革ですからその目的をはっきりさせなければなりません。しかし、この目的を間違って設定してしまうと、会社全体で間違った方向につきすすんでしまうということになります。当然、成果がまではつながりません。
そして、その軌道修正もかなり難しいものとなってしまいます。
 
この間違いをズバリ指摘すると、
 
正しい人事評価制度の
目的=人材の育成⇒経営目標の達成
手段=人事評価制度
 
間違った人事評価制度の
目的=賃金を決めること
手段=評価
 
と、なります。
人事評価制度は企業目標達成のための一つの手段として導入しなければならないのです。
 
私がセミナー等を行うときには毎回この点を強調しています。
しかし、セミナー後のアンケートでは
「人事評価制度の目的が人材の育成だということが初めて理解できた」
といった回答も多く、まだまだこのことを伝えていくのが必要なことを痛感させられます。
 
では、なぜ【賃金を決めること】を目的としたら人事評価制度がうまく運用できないのか、その理由をお話しましょう。
 
会社が
「今回の人事改革は適正な賃金を公平に分配するために導入
します」
と社員に対してアナウンスしたとします。なんとなく、もっともらしく聞こえますね。
 
A.評価の仕組み
B.賃金の仕組み
C.昇格の仕組み
の3つの仕組みから人事評価制度は成り立っています。
 
【公平な賃金分配】を目的にすると、『賃金の仕組み』が制度改革のメインテーマとなってしまいます。そのために納得感のある評価を実現する必要があるわけですが、その評価の目的も「評価される人に納得してもらうこと」となります。
 
しかし、本来の目的【人材の育成⇒企業の業績】の実現は『評価の仕組み』を使って達成していきます。もちろん、このプロセスでも評価の納得感ということは必要なのですが、面談を通じて評価に納得してもらった後に評価結果をもとに仕事の成長のための目標を設定してもらう必要があります。人材の成長のためには後者の方が重要です。
 
このように、【公平な賃金分配】を目的とすることと【人材の育成⇒企業の業績】を目的にすることでは重点を置く点とその取組みが全く違ったものになってしまいます。
 
一方、「賃金の公平性が目的です」と聞かされた社員は人事評価制度はそのために導入されたものと理解し、それに不公平感があれば当然文句を言います。
 
そして、それを聞いた会社はその不満を解消するためにはどうしたらいいか、対策を講じます。
 
ポイントはこの賃金に対する不満はきりがないということです。一端、満足した人も次々と新たな不満を漏らすようになってしまいます。
 
【公平な賃金分配】を目的としている限りこの不満それぞれに対応していかなければなりません。しかし、全ての賃金に対する不満を解消するのは不可能なのです。
 
ということは、目的に掲げた【公平な賃金分配】はいつまでたっても解決できないことになります。
 
人事評価制度そのものに対する会社の考え方、方針の部分が一番大事なのです。

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